第12話
「うらあぁぁぁぁ!」
突然男の叫び声が聞こえました。声の聞こえた方を向くと横尾さんが手に包丁を持って先生向かって突進してきました。
先ほど姿を消したので逃げたと思ったら、まさか凶器を探しに行って戻ってくるとは! こんな所で先生を殺害しても、罪は無くなるどころか更に増えるのに錯乱しているようです。
「ばか! そんなもん書いてないで避けろ!!」
先生に吹き飛ばされ地面に倒れてしまいました。痛いです。
そんなことより先生が!!
「ぐあっ!?」
あまりの出来事に目を見開いてしまいました。横尾さんが持った包丁は床に落ちたあと先生に遠くへ蹴り飛ばされ、横尾さんは先生に腕を取られて痛みのためか苦悶の表情を浮かべています。
「理解できないな。こんなことしてどうなる?」
先生は余裕の顔で、腕を後ろ手に取られたままで身動きが取れなくなっている横尾さんに向かって問いかけます。
「おやおや。すみません。少し到着が遅かったようですね。大丈夫だと思いますが、綾乃。怪我はありませんか?」
「遅いぞ。轟。警察は来たのか?」
その返答を待たずに複数の警官が入ってきました。
任意同行だったのでしょうが、横尾さんは自分の行いのせいで現場逮捕されてしまいました。轟さんがこちらになかなか来ないと思っていましたが、警察を呼んでいたんですね。
「ありがとうございます。綾乃。やはり毛利夫人によって引き起こされた殺人だったのですね。保険金はお支払いできない旨の報告書を会社に帰って作成します」
「ふん。保険金未払いはいいが、私への謝礼はきちんと払えよ。今回は危険手当付きだからな」
「いえいえ。当社は事故に伴う保険金ももちろん取り扱っていますが、残念ながら綾乃は怪我もしていませんしそもそも当社の被保険者ではないでしょう? 契約書にも危険手当を支払うなどと書いてませんから、いつも通りの額をきちんと支払わせていただきますよ」
「くそっ。私はお前のそう言うところが嫌いだ」
絵梨花さんと横尾さんは警察に連れていかれてしまいました。これから色々と取調べを受けるのでしょうが、おそらく先生の言った通りになるんだと思います。
「よし。これでゆっくり眠れるな。ああそうだ。宗次郎。夕食はうまい肉が食える店が良い。そう牧原に伝えておけ」
「分かりました。日時はどうしますか?」
「待つのも覚えておくのも面倒くさい。今日でいいだろ。今すぐ連絡しろ。轟。そこまで送れ」
「私はあなたのハイヤーではないのですがね。まぁ、そのくらいいいでしょう。報告書は明日の朝にでも書きます」
僕は牧原さんに電話をかけました。電話の向こうではよく分からないことを叫んでいましたが、時間と店の名前を伝えて電話を切りました。今頃向こうでは予定の調整やら大変なことでしょう。
続いて僕は知り合いのお店に電話をかけ予約を取りました。こちらも人数と時間を伝えたところ、個室を用意してくれるそうです。先生は人目を気にする性格とは思えないですが、同席する人にとっては良かったと思います。
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