第3話 幼馴染のお菓子
「ただいまー」
流季の靴がある。
「おかえりー」
リビングの方からだ。
リビングに行くと流季がお菓子を食べていた。
「あ、それ俺が食べようと思って買っといたやつ」
「ゴチになります」
パクパクとどんどん食べ進める流季。
「くっ、今度買っといてくれよ」
「へーい」
絶対買わないやつだ、これ。
また今度自分で買ってこよう。
仕方なく諦めて、手洗いうがいをしに洗面所へ。
リビングに戻ると、すでにお菓子は全滅しておった。
「はぁ、お菓子ばっか食べてると太るぞ」
つい言ってしまう。
「太んないもん。むぅの意地悪」
むぅとは俺のことだ。ちなみに向こうは“るぅ”
「はいはい、ご苦労ご苦労」
「そ、そんなに太ってないもん!1キロくらいだもん!」
「え?」
「…あ!」
なぜか太ったことを自己申告した流季。
……そんなに太ってない?
あぁ、ご苦労を5キロって聞き間違えたのか。
「へぇ〜」
ここぞとばかりにニヤニヤする。
「うぅ……」
恥ずかしそうに俯く流季。
お菓子よ。仇は取ったぞ!
「むー……」
この‘むー’は俺のことではなく、ただ拗ねてる時のやつだ。
そしてこのままどんどん拗ねていくと面倒なことも知っている。
「まぁ、1キロくらいどうってことないだろ」
フォローしてみる。
どうだろう。
「そうだよね!どうってことないよね!」
立ち直りが早い。
「むぅは太ったこと気づいた?」
気付くわけがない。
「いや、まったく」
「ならいいや♪」
更なるお菓子を求めて食品庫へと向かう流季。
こいつの家はお菓子禁止なのかと思うほどだが、それは違う。
「ごめんねぇ、なんでかむーくんの買ったお菓子が美味しいんだって」
とはおばさんの言葉。
おかげで俺には伊佐野家から流季のおやつ代が支給されている。
……が、普通に俺が食べようと思っていたお菓子まで食べてしまうのが安定の流季クオリティ。
なんとなく、お菓子を食べている流季を眺めながらまったりココアを飲む。
まぁ、こんな時間も悪くは……
「あ、なんかいい匂いする。ココアだ!」
「……」
悪くはない……か?
流季の分のココアも作るべく、立ち上がりながらそう思った。
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