こんな人でも好きですか

小森

王子さまが羨ましかった


「さて、少し前の話しをしようか。面白いよ」


 そう言って私は手元にあったロミオとジュリエットを開けた。簡単に、子供でも読めるくらいに短くされた絵本。ここにある本の中では新しい方。だが、読むのはそちらじゃない。本当に今から少し前の話だ。



「あるところに、甘えん坊で好奇心旺盛な女の子がいました。その子はみんなからステラと呼ばれていました。

 ステラには一つ上の姉がいました。ステラの姉は勉強やお稽古ごとで忙しかったため、いつも姉の友達、ルーナと一緒にいました。ルーナはそれはそれは可憐でとても頭の良い子でした。なので、勉強を教えてもらったり、遊びに付き合ってもらっていました。

 ある日、ルーナのもとにとある男がやってきました。とても親密な関係なそうな。ですがステラにはまだ親密な関係というものがわからず、顔がトマトみたい、と茶化していました。

 数カ月後男はまたやってきました。そのまた三ヶ月、二ヶ月、ついには一ヶ月に二回も来るようになりました。その度にステラは男からルーナを取られてしまいます。たまったもんじゃありません。ステラは考えました、あの男と同じような関係になれば良いと。

 ただそのような関係になる方法がわからなく唸っているとメイドがやってきました。メイドは二十上で色々なことを知っています。メイド曰く、プロポーズをすれば良いそうです。ステラはプロポーズをすることにしました。

 結果は断られました。最後にステラはルーナから口づけをされましたがそれが情けだというものだと初めて感じました。そして目から零れ落ちたものが愛だと初めて知りました。

 数年後、ステラの目の前にも素敵な王子が現れ結婚しましたとさ。おしまいおしまい」


 パタン。本を閉じて相手の顔を見た。


「どうだった?この話」


 いきなり昔話しをしたから驚いたのだろうか。相手は固まっている。それから数秒後、私をみながらゆっくりと頷いた。これはどっちなのだろう。面白くなかったのか。まぁ良い。


「ねぇ、もう一回聞くね。――私のこと、好き?」

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こんな人でも好きですか 小森 @0929-komori

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