第2話 医者のAさん

 今日は医者のAさん。開業医。60歳。6万〜。



 彼は優しい。年相応に年老いているが、品性があり落ち着いている。気前もいい。



 どれだけ待たせても待っていてくれるのだ。



 今日は、品川プリンス待ち合わせ。お部屋も取っておいてくれてる。




 会うのは月2回。それで彼の私への気持ちも長続きするのだ。




 タクシー待ちをしているサラリーマンを横目にヒールを鳴らして歩く。




 みんな、私は汚い人間だって分かるかな。これからお金のためにホテルに行く女だって分かる?




 ロビーに着くと、白いワイシャツを着た彼が、ベロア生地の大きな椅子に座って手を振っていた。




 とても嬉しそう。



 今日は和食だ。

 お酒を飲みながら彼を笑顔で見つめる。


 

 彼は見た目に自信がないようだった。

 だから私はいつも「今日も素敵ですね。」と言ってあげた。すると、彼は決まって顔が緩むのだっ

た。




 彼に抱かれるのはちょっと辛い。




 でも、仕事って辛いものでしょ?





 彼が財布からお金を出す仕草が好き。



 「今日はラッキーセブンの7万だよ」だって。




 私も嬉しいし、彼も嬉しそう。





 それでいいじゃない。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る