第53話 江戸時代だったらお嫁に行っている歳なんだぞー
<西宮月(にしみや つき)視点>
ようやく家に帰ってきた。何だか変な感じだにぁ。テレビもネットも月(ボク)達の話題で持ちきりだ。笑いが込み上げてきて止まらない。デ、ヒャヒャヒャ。みんなでリビングに集まりテレビを囲んで大笑いだ。だって、大人たちのあほ顔が・・・、うける。月(ボク)の兄貴、西宮陽(にしみや よう)が言った。何かふっ切れた顔をしている。
「やっちまったね!」
「はい。やっちゃいました」
佐々木瑞菜(ささき みずな)様が答える。
「ふふっ。もう芸能界には戻れないかも」
「はは、僕も学校、クビかもしれない」
「そうね。あれはないわね。名門修学館高校の元生徒会風紀委員長として言わせてもらうと、校内で『チュ!』はないですね。破廉恥すぎます。でも、なんかジーンとなりました」
そう言いながら森崎弥生(もりさき やよい)ちゃんは顔を赤らめている。佐々木瑞菜様も真っ赤だ。二人ともがわいい。大胆なわりにウブすぎるぞ。今どき、中学生でもキスくらいで驚かない。でも、ファーストキスか。んで、セカンドキスまで。羨ましいぞー。
「うひひ。兄貴!国民的無敵美少女アイドルの『チュ!』はどうだった」
くっ。もじもじせんでいい。兄貴まで真っ赤じゃないか。もう、いい加減、瑞菜様に対する免疫くらいつかないんか。あれっ!
「八重橋元気(やえばし げんき)先輩!どうしたんですか」
「いや!何でも。こちらの方は?」
んぎゃ!先輩、弥生ちゃんを見つめるんじゃない。
「森崎弥生と申します。陽くんとは幼なじみです」
やっ、弥生ちゃん。弥生ちゃんのブルーサファイアの瞳は、無条件で男の子を虜にするんじゃ。先輩を見つめるのはやめてー。
「先輩!この浮気者。月(ボク)をお姫様抱っこで逃げたくせに。ぶぇーん。先輩にもてあそばれたー」
月(ボク)はうつ向いてウソ泣きしてみせてから、上目遣いに先輩の顔を覗き込む。元気先輩のオロオロ顔がかわいいぞー。
「えっ、いや。ごめん。そんなつもりじゃ」
瑞菜様と弥生ちゃんが突然笑い出す。
「月(つき)ちゃん。バレバレですよ」
「ぶひひ。もう、瑞菜様。ばらさないでよ。んっ?」
月(ボク)の両手が八重橋元気先輩に握られてた。
「あの。俺と付き合ってください」
「えぇー!」
瑞菜様と弥生ちゃん。二人で声を合わして驚くな!兄貴、月(ボク)どうしたら。兄貴、なににやついている。月(ボク)、今、ピンチなんだけど。ってかチョー嬉しいんだけど。兄貴以外の男に目覚めたのだ。うひひ。
「ぼっ、ぼっ、月(ボク)なんかでいいの?」
ぐわっ!スポーツマン独特のさわやかすぎる笑顔。眩しい。眩しすぎる。なんだか体がふにゃってなった。
「だめです。月(つき)ちゃんは、まだ中3です。色恋沙汰は早すぎます」
でたーっ。私立修学館高校、元生徒会風紀委員長!お堅い。それはないでしょ。江戸時代だったらお嫁に行っている歳なんだぞー。
「えっ。中3?」
「はい。中3です。でも、ブラザーコンプレックスの治療には有効ですね。兄離れするには持って来いです。清い交際なら許します」
弥生ちゃん。今それをばらさないで。
「月(つき)ちゃん、陽くんにブラコンだったのですか?」
瑞菜様の視線が冷たい。瑞菜様と弥生ちゃんが口をそろえて言った。
「月(つき)ちゃんをよろしくお願いします」
なんでそうなるんじゃ!でも嬉しい。
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