「明日、死ぬかもしれない。」
朝陽うさぎ
Ⅰ 裏入団
魔導士の
それは、6歳の頃。
僕は、都より遠く離れたラルファ村で育った捨て子。
毎日、神父様とシスターと、育児放棄された子や両親が亡くなってしまった子と一緒に楽しく暮らしていた。
ある時、敵襲がやってきた。
「
そのうちの一人が、この村に襲いに来た。
でも、助けてくれた魔導士がいたんだ。
水魔法の使い手で、精霊ウンディーネも一緒にいた。
僕らの村ではあり得ないほどの
逃げることも忘れ、ただ茫然と見つめていた。
きっと
この人は違った。
この人も、僕らと同じ‘下民’だった。
どうしたら、あんなに強くなれるんですか、と、僕は問うた。
その人はちょっと考えてこう答えた。
「小さいころにたくさん練習して、たくさんご飯を食べて、強くなりたいって思うことかな。」
その人は村を去る前に、こう言い残した。
「俺の名前はソルシェ。君がもし、
そして、いつか追い掛けて来い。」
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「これが、
僕は―カイル・リウィルスは、
う締めくくった。
面接官はカルテを見て、「新入りにしては身体能力もまあまあ高い。魔力の蓄え量も多い。だが、入団する
「そうですか……。ありがとうございました。」
面接会場となっていた城を重い足取りで出ていく。
「やったぜ、合格だ!」
「練習した甲斐があったな!」
合格判子を押されたカルテを持った2人の青年が喜んでいる。
あの青年たちはどんな理由を話したんだろう。
きっと「国のために役立ちたいから」とか、「ナイツ団長の様になりたいから」というくだらない理由なのだろう。
僕もおとぎ話みたいなものなんだけどな。
今日も藁人形相手に特訓をする。
もちろん人っ子一人いない、森の奥深くで。
地元の人も迷い込んだら出られない、樹海だが、僕には「道標」があるから心配無用。
毎日同じ動作を繰り返す。
攻撃しては藁人形に当たり、また藁人形に攻撃する。
5分ほど練習すると、何かが飛んできた。
鳥でもなく、魔獣でもなく、れっきとした人。
しかも、飛んでいるのではなく、瞬間移動している。
何処かに消えたかと思うと、僕の目の前にしなやかに着地した。
「わッ!
」
「ああ、びっくりさせてすまなかったね。
ねえ、君の魔法見てたんだけどさ、自然魔法だよね!すごいなあ!
もう一回見たいんだけどいいかな?」
なんだろ、この人……初対面なのにグイグイ押してくる…。
「あの、あなた誰ですか?」
「え?ああ、僕?グローバー・クロックス。」
「いや、名前だけ聞いてもわからないんですけど……。あれ、その紋章は…。まさか……国王陛下ぁ⁉
大変失礼致しました!どうかお許しを!」
「あああ、そんなにかしこまらなくていいよ。いやね、都はなんか息苦しくて、こうやって毎日抜け出しているんだ。」
国王陛下が目の前にいる……これは夢かと思うほど、頬を思いっきりつねる。
感じるのは頬の痛み。
そして、国王が目の前に立っていることの驚き。
「…夢じゃない。」
「やっと自覚したようだね。」
国王は30代後半という雰囲気を持ち合わせていて、背もまあまあ高く、目つきは皇族とは違う。
「もしかしてだけど、今日、
「そうです。結局落ちてしまいまして…。」
「ふうん、……じゃあ、入団しよう!」
「え?どういうことでしょうか?」
「スカウトでも、ナイツには入団できる。僕が君をスカウトしたということにして、これで試験を受けなくても入団できるよ。」
「でも…、そんなことを陛下にやらせていただいてもよろしいのでしょうか。」
「大丈夫。僕が保証するから!」
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かくして裏入団することになった僕は、どんな仲間に会うんだろう……。
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