おとぎ無双〜クラス全員転生したけど最弱扱いされている〜

真京

第1話プロローグ

「っしゃー!飯だ飯!!」


4限目の授業終わりにそう叫んだのが誰かは知らないがその声に同意した者は全員だろう。


ある者は購買という名の戦争の為に走り抜けある者は他のクラスメイトの元へと遊びに行きある者はゲームをやったり本を読んだりする。

そんな普通の昼休み。


そんな中、#不死崎__ふじさき__# #莉紅__りく__#も大半と同じように弁当を食べ始めた。

一緒になって食べる者はいるがその輪の中に会話はない。

食べるときに喋りたくないが1人は寂しいという人が莉紅の周りにはよく集まる。

莉紅自身は別に1人でも気にしないタイプの人である。だからこそ集まるのかもしれないが。


食べ終われば彼女達の間にも会話が交わされる。

莉紅は1人の時間を大事にするタイプであるため話には参加しないが仲が悪いわけではない。

『友人関係は広く浅く(足首まで)』が莉紅の生き方。

実際彼女はそれが楽らしいし彼女の周りも彼女との距離感はそれがちょうどいい。


しかしパーソナルスペースにズカズカと遠慮なしに踏み込んでくる人物が莉紅は嫌いだ。

たとえば……


「不死崎、たまには皆との会話に混ざったらどうだい?」


この男、自分はいつでも正しい!いついかなるときも本能よりも理性を優先!自分は皆のもの!爽やかイケメンナルシストこと#吉崎__よしざき__# #華月__かづき__#。

今も机に手をつきながら莉紅に話している為顔が近い。


「いや、聞いてはいるよ。ただ私は返す言葉を考える時間が長いんだよ」


どうせ聞かないが一応反論はしてみる。


「嘘はよくない、君はずっと聞いていないだろう?僕の話も聞くのが面倒くさいという顔をしている。

もっと他人に興味を持つべきだと僕は思うな。」


もっともらしい言葉を並べるが彼は自分は優しくカッコいいから皆から愛されて当然という考えの持ち主だ。

だがそれは無意識のものである。

反対に他人どころか自分にもあまり興味を持たない莉紅のことが華月は自分でも気づいていないが嫌いなのだ。


ここだけ聞けばラブコメ展開があるだろうと考えるが莉紅は面白いことにしか興味がない。


モテる人が相手にしてもらえずムキになってるうちに好きになるなんて展開は王道すぎて面白いと思えない莉紅の心には響かない。


「えっと華月くん、私達はこのくらいがちょうど良いと思ってるからいいんだよ?」


昼休みに莉紅の元へと来る人の1人である#犬塚__いぬづか__# モエが無駄と分かりながらも莉紅を庇うような発言をする。

勿論彼女達からすればその言葉に誤りはない。


「友人に気をつかわせて悪いと思わないのかい?本当に君は……」


昼休み終了までの10分以上ある説教話を聞く気など全くない莉紅はヘッドホンを着けてスマホゲームを始める。


華月からは隠そうともしない不機嫌そうな顔、華月大好きなファンの皆様から素敵な殺意をプレゼント フォー ユー☆


だがそんな状況も特に面白くないため莉紅の興味はゼロ。


呼び出し食らってもノーと言える日本人である莉紅には効かない。

酷い噂を流されても大体の人は莉紅がどんな人間か知ってるため嘘だとすぐにわかる。

授業も普通に受け提出物はオールA+の面倒事を起こさない莉紅には教師経由で何かされることもない。


莉紅にいじめは効果無しである。


面白い事=非日常ではないがこうも毎日同じことの繰り返しだと人間どうしても異常を求めてしまう。


そんな時先生が教室にバタバタと急いで入ってきて下校しろと言われた。


なんでも爆破予告なんていう漫画みたいなものが届いたらしくイタズラだとわかっていても生徒を帰さないわけにはいかなくなったのだ。


半数は帰れる事を喜び半数は爆破予告が本当かどうかわからない為怖がっていた。


その数秒後に予告が本当だったと知る。


ピッピッピッ


小さい爆弾の音に気づく者なんてその中にはいなかった。

故に––


バギュンッ


教室にいた人達は爆発は本来ピストルのような音がすると初めて知った。

最上階にある莉紅の教室の天井が爆発した。

莉紅は頭がひしゃげる音を最期にその短い人生の幕を閉じた。


♢ ♢ ♢


目を覚ますと知らない天井。いや、真っ白で低く感じるだけで実際は空ほど高い。


起き上がれば目の前に神殿のような建物があることに気づいた。

周りにはクラスの人がいる。見たところ先生含めて爆発当時いた全員だ。


「わたし、死んじゃったの……?」


1人がポツリと呟く。

大半にとっては聞きたくない言葉だった。自分が死んだ事を認めないといけなくなりそうだったのだ。


数人が今にも泣き出すといったところで神殿の中からぞろぞろと人が出てきた。


男性も女性もいるし年齢もバラバラだ。

莉紅達が状況についていけない中1人の老人が話を始めた。


「異世界からの救世主等よ、どうか我々の世界を救っていただきたい」


老人が言うには今異世界では魔族達が世界征服なんて漫画のようなことを考え人間の領土を侵略中らしい。


そして現状を打破するため召喚の儀式で老人含めた神殿から出てきた人達が身を捨てて十数年後の勇者や聖女のための守護霊的な存在になる。


神殿から出てきた人々、聖霊と呼ばれる彼等はまず莉紅達とパートナーを作る。

そして転生した際にパートナーである聖霊がサポートとして世界の常識や戦い方などを教えてくれる。


ちなみに勇者や聖女は聖霊の能力値を倍にして産まれるそうだ。


そして本来なら1人1つの固有魔法を聖霊から受け継ぐことが可能で勇者、聖女は固有魔法を2つ使えるのだ。


他の説明も色々あったがその他のは神はどうとか自国の王はなんだとか莉紅は興味のない話であったため聞いてなかった。

だけど莉紅は思う。


「面白いなぁ」


異世界転生なんて漫画の中だけだと思っていたが今実際に体験できるというのだ。


勿論前世に思い入れがないわけではないが死んだと言われたら他にどうすることもできない。

莉紅はあっさりとこの状況を受け入れた。


それからは状況をいまだに理解出来ない人がガヤガヤと叫んで話が進まず飽きた莉紅はその場で寝ることにした。

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