第45話 陰キャな僕は振り返る
そして時は過ぎ、太陽の突き刺さるような日差しが少しだけ柔らかくなった頃、僕は高校へと向かう為に久しぶりに通学路を歩いていた。
―――そう、本日は夏休み明けの始業式である。
………………はぁ?
「え、え……? ちょっと待って、高校一年の夏休みの思い出が積みラノベを消費したこととねーちゃんとの買い物だけ……? それって今を生きる男子高校生として大丈夫なのか……?」
僕は違う意味で汗を流しながら自問自答する。
そう、姉と買い物に行ってから約一カ月経過し、夏休みが息をするように終わった。その
………………はぁ(二回目)?
うっわ、えぇ……。夏休み中にしたことといえば、ラノベを読んだり、ソシャゲしたり、姉との買い物をしたり、気分転換に図書館に行ったくらいだよ……。結局行っても文音さんはその日お休みでいなかったしねぇ……。
結局、自室のベッドでごろごろしながらラノベ三昧な濃密な日々だったなぁ……(遠い目)!
あとは、あとは何してたかな僕……っ! ちゃんと思い出せ……っ! きっと他に何かある筈だよ……っ!
唸りながら顎に手を当てて懸命に思い出を探り当てていると、ふとぴんと閃く。
「……あっ、そういえば大きいサイズのバニラアイスを食べてお腹壊したなぁ!」
そうそう、レディ○ーデンのビッグサイズのアイスを一気に全部食べ過ぎちゃってその後お腹がきゅるきゅるしたんだよねぇー!
数時間トイレに籠ったのは良い思いで………じゃねぇよ!
よりにもよってなんでそんな碌でもないことを思い出しちゃったんだろうね(やけくそ)!? ……いや美味しかったけどさぁ!?
僕は思わず表情を歪めながら頭を抱える。
だって、もっとこうさぁ! なんだかんだ友達がいないとしてもラノベとかだと出掛けたりとかしたら女の子との出会いフラグってなにかしら乱立してるワケじゃん!?
え? ラノベの読み過ぎ? ご都合主義な妄想乙? ……うるせぇわいっ(涙目)!!
「クソッ……! 僕の、僕の高校初の夏休みが灰色同然じゃないか……っ!?」
「そうだったのぉ?」
「そうだよっ! もっとこう高校の夏休みなら青春的な……しいて言えば女の子との出会いが欲しかった……ってぇ、風花さん!?」
「おはよぉ来人くぅん。―――へぇ、そんなこと考えてたんだぁ」
「お、おはよう風花さん……! え、な、なんだか怒ってらっしゃいますでしょうか……?」
「べっつにぃー」
背後から話しかけてきたのはゆるふわ系天使こと風花さん。心から待ち望んだ彼女との高校生活、いつものように楽しくお話をしたいのだけれど……どうやらそうもいかないらしい。
声音は若干沈んだ様子で、頬をぷくーっと膨らませている。原因はきっと僕が風花さんと気付かずに会話した内容だろう。
何故それが引き金になったのかは分からないけど、僕の言葉を聞いた風花さんはどうやらご立腹のようだ。
うーん、思春期男子が
……はいウソですごめんなさい調子乗りました。ラノベ好きで陰キャな僕のくだらない妄想です……。
「や、やっぱり怒ってるよね……? できればその理由を教えて頂きたいなー、なんて」
「つぅーんっ」
ぷいっ、と風花さんは顔を背ける。
彼女が呟いた言葉を最後に一切僕の方へと目を合わせようとはしない。……はぁ、それでもそのぷくーっとした顔カワイイんだよなぁ(うっとり)。
……っていやいや! この状況ってまさに、せっかく仲良くなったのに
このままじゃ駄目だ、頑張れ来人! お前には胸に掲げた誓い『ESC(※エンジェル・スピーク・チャレンジ)!』があるだろう!
ここは夏休みの話題を
さぁ、向き合うんだ!
「あっ、そ、そういえばご家族と一緒に旅行に行ったんだよね? どこにいったのか僕、すっごい気になるなぁ?」
「………………」
「あと風花さんって、夏休み中に実家に帰省してたんだよね? いやぁ、トーク上の何枚もの写真を見た限り綺麗な海が見えたし、安心出来る落ち着いた場所なんだろうなぁ。夏と言えば海! 風花さんの水着姿とかすっごく興味あるなぁ?」
「………………(ぴくっ)」
「親友の三ツ橋さんとも買い物に行ったんだよね? あははー、予定がたくさんありそうで遠慮しちゃったけど、叶うことなら僕も夏休み中に風花さんと一緒にどこかに出かけたかったなぁ!」
「………むぅ、誘ってくれれば強引にでも予定入れたのにぃ」
「………?」
顔を背けているせいで、彼女の表情とさっきごにょごにょと何を話したのかさっぱりわからない。一瞬だけ茶髪から覗く耳がぴくりと動いたのは分かったけど、変化はそれだけだ。
……って、僕会話の中で本音とはいえ『風花さんの水着姿が興味あるなんて』変態チックなこと言ってない?
え、もしかしてさっきの耳をぴくりと動かしたのって引かれたってこと……? ふぁ、どうしよう!? これ以上今まで培ってきた好感度が下がったら地中にボーリングの如く埋まっちゃうんだけど!?
風花さんにだけはなんか絶対に嫌われたくない!
そう考えて体感時間三十秒、僕はそのまま二人で歩きつつ口を開いた。
「ふ、風花さん。あのね、因みにさっきの海の話はヘンな意味で言ったわけじゃなく………!」
「―――ねぇ来人くん、そんなに私のことが気になるのぉ?」
「………っ!」
僕が風花さんに弁明しようと手をわたわたとさせて焦っていると、彼女は立ち止まりながら首を傾げてそう問い掛けてきた。
その上目遣いで真っ直ぐ見つめる視線に思わず僕も立ち止まる。いつものにへらっとした表情とは異なり、僅かにいじけながらも真剣味の帯びた顔。
正直、どきりとした。
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