第17話 腹黒天使への癒し手
※教室に戻ってからの風花ちゃん視点です。
昼食を食べ終えてから私とりっちゃんは自販機に移動。食後の飲み物として甘いコーヒーをいつも買うんだけど何故かりっちゃんは無糖の苦いコーヒーを買ってた。
うんうん、自他ともに『クールビューティ』って認めているからこそ形から入ろうとしているのかなぁ? 仕事が出来るオンナ的な感じぃ? 親友としてはそんなに悲しそうに苦い顔しながら無理して飲むんだったらそのままの可愛いりっちゃんが良いんだけどなぁ……。まぁ新鮮で面白いから言わないけどぉ。
教室の扉近くでりっちゃんと別れると、私は来人くんの頭なでなでの事を思い出してうきうき気分で教室に戻る。
多分ウェブ小説を読む為にスマホを触っている彼を視界におさめると、自然に笑みが零れた。
きっとりっちゃんが"恋人"なんて言葉を出したからだろう。
………うにゅ。
自分の席に座ろうと椅子を引いていると、なんと私の顔を見ながら来人くんが話しかけてきた。会話するならごく普通の日常風景。しかし私の心境は驚きに満ちていた。
―――えへへぇ、えへへへへぇ……嬉しいなぁ! ラノベやウェブ小説が何よりも好きな来人くんが読むのを中断してまで自分から私に話しかけてきてくれたぁ……っ!
りっちゃんからは顔が溶けていると注意された私だけれどもぉ、彼の前では必死に押さえる。雰囲気からだろうねぇ。洩れ出た感動や幸福感を見透かされちゃったけどぉ、容姿以外にも彼が積極的に向き合おうとしてくれている事を改めて実感してすっごく嬉しいぃ。
うん、宝くじの高額当選なんて比じゃないねぇ。
はっ、これはもしかして来人くんのなかを占める割合の優先度が私に傾いているのではぁ……っ!?
と来人くんが難しい顔している事に不思議に思っていると唐突にある事を閃いた。
ふっふっふー、それは『"幸せのお裾分け"という名目で彼の手を掴んで私の頭を撫でて貰う』ということぉ! 授業の合間の休憩時間に私が来人くんの頭を撫でたんだから、来人くんが私の頭を撫でてもなにも問題ないよねぇ? 私あったまイイぃ!
でもなんでこんな回りくどい名目なのかぁ。……それはねぇ、撫でて欲しいってお願いするときっと来人くんはその願いに応えてくれる。でも非常に、ひじょーに遺憾なんだけれどもぉ、私に遠慮しておずおずと軽く触れる程度に撫でる未来しか見えない。
だから私から行動するのだ。彼がいつか自分に自信が持てるようにねぇ。………いや違うよぉ? 撫でて貰うついでに彼のしなやかで大きな手の感触も確かめたいなぁとかぁ、さっきお手拭きで手を拭いちゃったからもう一度来人くんの身体的部分の一つに触れたいとかぁ、一切思ってないからねぇ(内心目を逸らしながら)。
両手を貸してと言ったら何故か謝られたけどぉ、私はそのまま彼の手首を掴み頭の上に乗せた。そして彼の手の甲をしっかりと(ココ重要!)包む。
……うわぁ、おっきぃ。あったかぁい。すべすべしてるぅ……! 男の子らしい骨ばった大きな手だけれどもすごく安心感のある手ぇ。
これはあれだねぇ、
なんだか固まった来人くんの口から変な声が洩れたけど、私は天にも昇るような気持ちのまま気にせずに"幸せのお裾分け"という名目を口にする。
……んぅ? カタコトだけどどうして……あぁーそっかぁ! 家族以外で女の子に触るの慣れてないから動揺してるんだぁ……かーわいいぃ♡
ごめんねぇ、でもこれは来人くんの為だから我慢して欲しいなぁ。―――じゃぁ動かすねぇ……!
すりすり。
すりすりすりすり。
すりすりすりすりすりすり。
………………………。
えへへ、えへへへへへへへへへぇ!! なにこれしゅごぉい! さいっこぉ! ひゃっふぅー!
来人くんの手を押さえて私が動かしているとはいえ、実際に好きな人に頭を撫でて貰っているという事実に内心とっても興奮を覚える。あぁ、もちろん表情は頑張って押さえているよぉ。でも最小限のにまにまは許してねぇ。
またもちっちゃい何人もの私が内心で踊り狂っちゃったぁ(チアガール応援ポンポンふりふりver!)。
ふぅ、まるでお風呂に浸かっているかのように心がじんわりとぽかぽかしてるよぉ。こう、安心感に包まれながらもどきどきするような感じかなぁ? 少しだけ胸がきゅっと苦しくなるけどぉ、寧ろ心地良い苦しさ。
―――あぁ。
(私ってぇ、やっぱり来人くんのことが好き。大好き。どうしようもなく、いつでも彼のことを考えちゃう)
来人くんの指と指の間に私の指を入り込ませながら思う。なでなで。
その感情を自覚してないわけじゃないよぉ。今もなお続いている彼の温もりに触れていると、狂おしいほど私の芯の部分が揺さぶられるんだぁ。
………うん、私は彼に"恋"しているんだって改めてハッキリとわかる。
でもぉ、まだ私から告白はしないよぉ? だって女の子だもん、憧れの一つや二つ……うぅん、数え切れないほどたっくさん持ってるしぃ、二人でこれからもっと思い出を作っていきたいからねぇっ!
やばぁ、自分で考えていてなんだけどぉ、なんか途端に恥ずかしくなっちゃったぁ………っ。
よし、と私は気を取り直すように来人くんをふと見上げると、彼をこちらを見てはいなかった。正確に言うならば顔の方向は私を向いている。でも、視線は私ではないあらぬ方向へと向いていた。
その後、すぐに私へと潤んだ目線を向ける。
うぅ……っ、そんなウサギのような小動物的なつぶらな瞳で見られてもぉっ。思わず息が詰まって言葉が告げられなかったじゃぁん。口元もキュートだから許しちゃ……いやいやぁ、ここは冷静にぃ。心の中で深呼吸深呼吸。
よしぃ、改めてぇ。
むぅ、来人くんってば酷いなぁ。私はキミだけのことを考えて集中してるっていうのにさぁ……。この前伝えたよねぇ? 私のこともっと見てってさぁ。
確かに来人くんのクラス内の立ち位置的に目立ちたくないのは理解してるけどぉ、『天使』な私が積極的にキミに話しかけている以上、それは無理な話ってものだよねぇ?
だから、大変だろうけど自信を付けて貰う為にもこういった視線に早く慣れてね? あ、そういえば感想聞いてないなぁ(微笑み)。
………ふぃ、色良い反応貰えてとっても満足したぁ! どうやら来人くんも許容量が限界だったみたいなので頭なでなでは今日はここでおしまぁい。
最後の
すると、彼のしなやかな指が少しだけ私の耳の
髪を搔き上げると、私は誤魔化すように「えへへぇ」と彼に笑みを浮かべる。
私ってぇ、耳が
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