冬期湛水不耕起深水栽培のテストが開始されたようだ、共通一次試験の迷走ぶりは酷いよな

 5月3日 - アカヒ新聞社阪神支局襲撃事件いわゆる赤報隊事件が起きるはずだったが、これは起きなかった。


 さて、5月になり北条先輩から報告があった。


「八千代や成田における、昨年に耕作を行っている水田および耕作放棄されていた水田の田植えが開始されました」


「ああ、冬期湛水不耕起栽培のテストがこれでできるな。

 これで農薬や肥料などの原料費、耕作用機械設備の購入や人件費が削れて、うまく収穫できればいいけど」


「とは言え専用の田植機などの初期投資はありますから早めに元は取りたいものですが」


 そういう北条先輩に俺は苦笑しながら答えた。


「焦るとろくなことにならないよ。

 特に昨年まで普通に農薬とか化学肥料を使っていた田んぼはそんなに簡単に収量は増えないはずだし、しばらくはあまり収穫できなくても焦らずに行くしかないよ」


「じれったいですわね」


「フラッシュメモリーだって開発はできても商業的に使えるレベルまで価格を下げるのは大変だからね。

 学校経営だってすぐに良くなるわけじゃないでしょ?

 むしろアイデアを形にすればすぐ金になるゲームのほうが異常だよ」


「たしかにそうなのでしょうが……」


 通常の水田では、秋に稲刈りが終わって水を抜いた後、土を耕して冬を越し、春にも2〜3回耕してから水をいれて田植えをし、雑草が出ないように除草剤をまいて、稲の生育のために肥料をいれるということをする。


 冬期湛水不耕起深水栽培では稲刈り直後に耕起せず田んぼに稲藁、米ぬか、ボカシ肥、ミネラルなどをまいてから、すぐに水をはってそのまま冬を越し、代かきをしないで、成苗を使い専用の田植機を使って田植えをし、水深を深くして雑草の育成を妨げる。


 むろん冬期湛水不耕起栽培はどこでも成功するわけではない、水が豊富で冬でも簡単に凍らない、後は周囲の農家の反発がないという条件が必要だから、冬に水不足になる地域では実施が困難だし、従来の農法の圃場ですぐに冬期湛水しても農薬はすぐに消える訳ではないうえに、普通の農家だと周りの反対でできないということもある。


 しかし、不耕起水田では落ちモミが土の中へ隠されてしまうことが少なく、イトミミズやメダカ、タニシなども増えて、鴨や雁などの渡り鳥にとっても食物を多く得ることができ、休息場所としての価値も生まれる。


 そして飛来した水鳥はたくさんの糞を水田に落としそれが、天然の肥料となる。


 俺は地域と一体化している農家ではないからそこまで周囲に配慮する必要はない。


 栽培品種はコシヒカリなのでこちらは特に特定品種でなければいけないということはないが比較的寒さに強い必要性はある。


 むろん畦畔の除草は動力刈り払い機とモアにより行ったりするので人手が全く不要というわけではないし、いわゆるアオミドロやサヤミドロなども発生するので見た目は良くない。


 しかしそういった存在が光合成によって水中に大量に酸素を供給してくれ生物を活動しやすくしてもくれるのだ。


「ヘイケホタルは6月から8月くらいに見られるはずだから、早ければ来月にはホタルを見られるかもしれないな」


 俺がそう言うと豊臣さんが興味深そうに言った。


「今まで見たことがないですし、できれば直接見たいものですね」


「ああ、そうだな。

 今年にでもホタルを直接見られれば良いな。

 まあ、それはそれとして3年は受験もあるし、睡眠時間を削って勉強したりゲーム制作したりすることは、できるだけしないようにしていかないと」


 俺がそう言うと斎藤さんがうなずいた。


「それはそうね。

 睡眠を削って勉強しても覚えられないのでは意味がないわ」


「そうだよな。

 ムダに長く勉強したりしてもかえって効率が悪いから休憩や睡眠はちゃんと取らないとだめだな」


 昨年までの一校のみ受験からABグループによる複数受験が認めたことで東大、京大のW受験が可能になったが、その合格者の多くが東京大学に入学したため、京大がこれを問題として来年度から東大京大のW受験はほぼ不可能になった。

 さらに一部の大学では事実上一次試験の点数を評価しないなどの迷走を繰り返すことになる。


 ”前”では2002年から2010年のいわゆるゆとり教育が非難されていたがそれ以前の1979年から1989年まで行われた共通一次試験の迷走もかなり酷い。


 教育改革をするのはいいがその前に文部省を改革するほうが先じゃないかと思うよ。

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