サンシャインのサードパーテイの移植ソフトも順調に売れているな

 さて、サンシャインとポケットサンシャインはその後も順調に売れ続けている。


「サンシャインは本体そのものではほとんど利益が出なくても、ソフトは順調に売れているし良いことだな」


 俺がそう言うと北条先輩は笑顔でうなずいた。


「ハードでの利益が出なくても、ソフトで利益は十分出ていますからね。

 CD-ROMですと原価がかなり安くできますし、サードパーティの販売ソフトからもマージンが入ってきますし」


「だな」


 ジュエルスやリズムマニアックスなどのアーケードのインカム収入が落ちてきている状況としてはサードパーティの発売するソフトのマージンが入ってくるのは美味しい。


 サンシャインはホムコンなどに比べれば確かに本体価格は高いが、ホビーパソコンよりはずっと安くてアーケードゲームやパソコンゲームがほぼそのまま移植できるというのはかなりでかい。


 カプコのアーケードゲームの移植としてストリートバトラーが移植され、対戦要素がなくなった代わりに6ボタン対応ジョイスティックでアーケードゲームそのままの操作感覚で移植されたことで一部のゲーマーにはかなり熱狂的に受け入れられた。


 救世主のエルスリッドもシミュレーション好きにはそれなりに受け入れられていると思う。


 その他のメーカーの日ノ本ファルコムの大ヒットパソコンゲーム”ザナドー”やT&Tの”ハイアンドロウドライド”、栄光の”織田信長の野望”や”三国志”、アートダンクの”ACE列車で行こう”、システムソフトサービスの”大戦略86”、中洲ソフトのアドベンチャーゲームJ.Jハロルドシリーズ”、マイクロカビンのアドベンチャーゲーム”めぞん一刻館”日本テルネットの”夢戦士ファリス”シリーズなども移植されてそれらも結構売れている。


 さらにニャムコが源平討鬼伝、タイトのダレイオスや危機怪界に加えてSAGAのファンタシーゾーンなどのゲームセンターのゲームの移植も進んでいる。


 この時代だとパソコンゲームやアーケードゲームを家庭用ゲーム機でほぼ忠実に移植できるというのはかなりインパクトがでかい。


 そもそもホムコンも初期だとニャムコのアーケードゲームが遊べたというのが躍進できた理由の1つだし、アーケードゲームを家庭用ゲーム機に移植するのは当たり前に行われている。


 もっとも昭和58年(1983年)のアーケードゲームと現在のアーケードゲームではグラフック関係で差がでかいから、今のホムコンはアーケードゲームの忠実な移植は難しい。


 無茶移植だとか劣化移植と言われる例は数え切れないし、むしろなぜ移植したという声が出たりもするからしばらくは安心だと思う。


 問題はCD-ROMは読み込みに時間がかかるってことだけどな。


 やっぱりちょっといらっとすることはあるみたいだ。

 ・・・


 そんなライジングの躍進に苦々しい思いをしているのはPCジェネレーターを今年の10月に発売予定のハデダゾンとMECであった。


「まさかあんな無名だったぽっと出の会社のハードがこんなにも成功するとは」


 そういうのはMECの担当。


「まあ、うちもそう変わりませんが、まさかニャムコではなくライジングのハードがここまで成功するとは予想外でしたね」


 そういうのはハデダゾンの担当だが、ある意味共同開発と言う形態がこの事態を招いたとも言える。


 ハデダゾンは最悪ソフトの利益が出ればいいが、MECはハードでも利益が出ないと困るのだ。


 そして多額の開発費をつぎ込んだ以上今更やめるということも出来ない。


「CD-ROMは読み込みが遅いという欠点がありますし、カードソフトをうまく使えばまだなんとかなるでしょう」


「それではCD-ROMを使う意味がないのでは?」


「であればCD-ROMの大容量を生かした声の出るソフトなどをうまく作るしか無いでしょうね。

 ある意味ライジングのソフトで受けている要素を抜き出せば良いのですから、自分たちで試行錯誤するよりは楽ですが」


「ではどうするのだね?」


「あちらはRPGはさほど重視していないようですし、大作RPGを制作していくべきでしょうね」


「ならばうまくやってくれよ」


「ええ」


 彼らにはライジングの成功はハードの性能によるものと言う認識しかなかったが、実際には中古ゲームショップへの販路の開拓やレンタルショップ併設のゲーム店を新たに建てていたりコンビニでも販売するという流通ルートの変革であったということまでは認識できていない。


 一方で陣天堂に焦りはなかった。


「ハードが高性能でソフトが大容量であれば面白いというものではない。

 アーケードメーカーのソフトもホムコンへの影響はもはや少ないし問題はあるまい」


 社長の言葉へうなずくのは縦井軍平。


「大量の情報を処理することができれば、より素晴らしい、より楽しい面白い遊びを創り出すことが出来るわけではありませんからね。

 実際に家庭用ゲーム機として5万円は高すぎます。

 とはいえゲームボーヤと競合する携帯ゲーム機を先に発売されたのは痛手ですが」


 事実としてマリオンシリーズやゼルドシリーズに加えてドラクレと言うヒットタイトルも持っている陣天堂の牙城をサンシャインが崩せると彼らは思っていなかった。


 しかし、現実的には多くのサードパーティのゲームクリエーターたちはホムコンのロムの容量の少なさや性能の低さに不満を感じていたし、アーケードメーカーやパソコンメーカーはサンシャインへの移植に積極的だった。


 そしてサンシャインがビデオCDを使ったビデオデッキとしても使えることに意味があると彼らは思っていなかったのである。

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