仕事中の疲労などを軽減するために人間工学に基づいたイスを開発できる会社も買い取るか
さて、俺は働き方について大きく変更することを北条先輩に提案することにした。
「北条先輩。
ライジングとか証券会社、出版社なんかの就業時間は基本6時間労働の給料据え置き、完全週休二日制、具体的には始業時刻は午前9時半、終業時刻は午後16時半、昼食は30分で、45分間集中して働いた後に5分間の休憩をそれぞれはさむ、でいいと思うけど、どうだろう?
銀行と株式は9時から15時だから通しで6時間勤務は厳しいだろうから、引き継ぎなども含めて8時半15時半と13時半19時半の二交替とかで行くしかないと思うけど」
俺がそう言うと北条先輩は驚いたように言う。
「え? 一日2時間も減らして大丈夫なのですか?」
「そもそも俺たちはゲーム開発なんかを放課後にやっているからもともと8時間も働いてないし、事務仕事なんかを含めてパソコンを使うようになったことで昔より仕事の効率自体は上がっているはずだからね。
書類を書き損じたら全部やり直しとかもないし。
逆に今後は目などの疲労が問題になってくると思うよ」
「なるほど、たしかにそうかも知れませんわね」
「あと、イスに関しても長時間座っていても腰痛とかが発生しにくいように、人間工学を考慮したイスを開発してそれを使うようにしていくべきだと思う」
実際に1994年によってデザインされたアロンチェアなどは一般的な体格に収まる使用した人間の99%は快適だと言うらしい。
日本の事務用イスの場合、家具の椅子ほど座り心地などは考慮されてきていないのが実情だ。
学校の勉強机と椅子なんかはひどいものだしな。
一応1960年代以降には人間工学的視点が事務用椅子にも採り入れられることにはなってきている。
事務用椅子の場合はそもそも、購入者と使用者が異なる場合が多く、さらに使用者の体格などが最初から想定されていないので買う時に使用者に合わせるということが難しい。
それでも事務用椅子の快適性を向上させる方法としては高さなどの調整ができるというのがまずは第一だろう。
学校の椅子の場合それすらまず考慮されないわけであるが、そもそも成人男性と女性では身長なども大きく違うことから事務用椅子の高さ調節は50年代でも行われていた。
しかしこのころの事務用椅子は背もたれが傾けられる構造になっていなかったりする。
60年代には人間工学が取り入れられ、座板や背板の形状に、人間の尻や背中の形状を考慮した曲線が取り入れられた。
その後のオイルショックもあって事務用椅子需要が停滞したこともあって、その進歩は80年代になり外国の事務用椅子の影響とコンピュータのオフィスへの浸透によって事務用家具に対するユーザーの意識の変化が生じた。
座の上下調整機能にレバーによるガススプリングが取り入れられて座る人間が変わっても高さ調節が容易になった。
その後に樹脂製のネットを座面と背もたれに採用し、背中全体で体重を支えることで、腰への負担や大腿部の圧迫を軽減する事務用椅子も開発される。
これはコンピュータの長時間使用による今までの肉体労働とは違う肉体疲労が表面化して、目・肩・肘・手・指の疲労が問題になったからだ。
これはパソコンやキーボードなどをおいたため肘を置く場所がなくなった上に、キーボードを叩く時は腕全体を中に浮かべ続ける必要があり、そのような状態で同じ姿勢で長時間の作業をし続ける事が普通になってしまったからだ。
これに対しての対策として事務用椅子に肘掛けが取り付けられるようになって、ヘッドレストの設置も進むようになる。
日本ではオフィスへのパソコン導入が欧米程進んでいないので事務用椅子の方も海外よりは遅れているのが現状だ。
「確かにパソコンを作業で多く使うようになると、目や肩、腕などの疲れがひどくなるのはわかりますわ。
それに対応できる椅子は必要ですわね」
「うん、腕を置いて休めることができるような肘掛けや、お尻の圧迫で血流が悪くなって、足がむくんだり、冷えたりするのをふせぐために、背中や頭でも体重を支えられるようにしたりもできるようにするべきだろうね」
俺がそう言うと北条先輩はうなずいた。
「そうですわね。
どこか国内の事務機器メーカーを買取り、そこで開発を行わせましょう」
「うん、お願いね」
ブルーライトとかモニターからの電磁波とかも問題になるはずだけど、そっちは実はあんまり科学的な根拠はなかったりするのだよな。
ともかく座り続けてパソコン作業を長時間続けても疲れづらい椅子の開発が最優先だな。
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