日本は妊婦や幼児に冷たすぎるのも少子化の原因ではないだろうか

 9月6日 - 土井わし子が日本社会主義化党の委員長に就任し、主要政党で日本初の女性党首になった。


 さて、日本社会主義化党の女性党首が誕生したように、世界的には政治や企業での働き方に男女平等の概念が持ち込まれ「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」いわゆる男女雇用機会均等法が、昨年昭和60年(1985年)に制定され、今年昭和61年(1986年)施行された。


 これは1970年代以後、欧米を中心とする国際社会が性差別撤廃の方向に舵を切ったことによる。


 これにより企業の事業主が募集・採用や配置・昇進・福利厚生、定年・退職・解雇にあたり、性別を理由にした差別を禁止することがを定められ、看護婦が看護師に、スチュワーデスが客室乗務員、保母が保育士などに名称変更されたのもこの法律による。


 だが男女が平等であるという建前を本気で守るつもりもなく、女性は子供ができれば「妊娠は病気じゃない、甘えるな」「妊娠されて職場を離れられると迷惑。なんで今妊娠したんだ、仕事はどうする?」とか責められたりするのが実態だった。


 そもそも男女平等社会の実現が日本の自主的な取り組みであればいいのだが、実際は外国に押し付けられちゃったのに過ぎず、法律上の扱いが平等であっても妊娠出産など生理的な機能の違いに基づくものは除くという意識が希薄な日本では現場での歪みが大きいのが実状だと思う。


 たとえば男女平等ランキング上位のフィンランド、アイスランド、ノルウェーなどがそうなり得たのは、北欧諸国の政治家の特徴は「議員は一生の仕事であってはならない」という文化圏であることや、人口が少ない地域でもあったことで、女性労働者の確保が必要不可欠であり、女性にどんどん働いてもらって、税収を上げる必要もあったことだ。


 人手が不足しているから男性の仕事を女性が奪うというような状況にならなかったことで、経済的にも理にかなったものであったわけ。


 しかし、日本社会は、男性は労働、女性は家事・育児と家制度が戦後も長く続いていた。


 そして日本は70年代や80年代は受験戦争、就職戦線は苛烈な時代でオイルショックで窓際族も生まれ社内失業者と呼ばれる状態の人間も多かった状況でもある。


 ただ、ちょうどバブル景気ということで企業が人員確保に狂奔していた事もあって、女性の社会進出は一時進んだのだが、そもそも日本の企業が女性という新たな労働力を求めているかと言えば多くはそうでなかったわけだ。


 とは言え、情報やサービスを軸にした新たなネット社会に合った労働構造への方向転換を日本社会はうまく進めることができなかったのも事実であろう。


 結果として女性は主に非正規として安価な労働力としての労働への組み入れという状態になってしまったわけである。


 そして総合職として採用された女性も仕事も恋愛もどちらもうまくやろうとして二兎を追う者一兎も得ずになってしまったわけだな。


 また転倒の危険がある階段の上り下りはなるべくするべきではないが、妊婦検診のために電車で何駅も離れた病院にまで行かなければいけない人も大勢いる。


 この時代はエスカレーターやエレベーターがついている駅など殆どないのにも関わらず、特に私鉄沿線の駅前には大きな病院がないという場合も多い。


 一方フランスでは第二次大戦後、人口回復のために出生を増やしたいという国の強い意志と、「妊婦は社会的弱者で、国民みんなが守らねばならないと「フランス刑法典」の434-3条などで定められていることもあって、雇用主に妊娠を理由にした不当な扱いを禁じ母体保護を命じる労働法と医療費を社会保険でカバーする社会保障法が整備されている。


 90年代には、無痛分娩を含めた妊娠出産の必須医療環境はすべて無償となり、それまでは一時的に金銭の立て替えが必要であったものがそういった経済的な心配をしなくても良くなった。


 だからこそフランスでは「妊娠は病気ではない」が「だから大変だね、みんなで守らないと」となるのだが日本では「妊娠は病気じゃない」「だから甘ったれるな」になるのとは大違いである。


 一見すると「男女平等」という言葉は、とても素晴らしく聞こえるし、世の中もそういった方向へ大きく変わってきている。


 うちのゲーム制作部のメンバーが女性ばかりなのは学校の生徒数の比率で女性の方が多いからではあるが、女性の方が実は向いている作業とかも結構多いからでもある。


 逆にいえば例えば重いものを運ぶような仕事には女性が向いているとは思わないしそこも完全に平等にするべきだとは言えないだろう。


 で、日本の場合は、都合のいい時は女という立場を利用して、都合が悪い時は男女平等を叫ぶ人が多い気がする事もあって生理や妊娠を盾にするな、泊まり込みの残業も同じようにやれという男側の風潮も生まれるのだと思う。


 実際の所男女で身体のつくりが違う以上、完全に「同じ」にはできないし、”妊娠するな””子供を生むな”というのは将来の自分たちの首を絞めることでもある。


 実際年金がもらえなくなって困ったのはこの頃の管理職も同じだ。


 バブル期に出生率が下がってるのはまず恋愛や結婚に「3高」という形で市場原理を持ち込んだこともあるだろう。


 バブルだからといって皆の給料が上がったわけではないので、地味な仕事をしている地味な男性はそこで脱落したわけだ。


 まあ現状では「高学歴」「高収入」「高身長」という三高をもてはやす風潮は生まれていないので”前”よりはマシになりそうだと思うのだが、日本でも妊婦や幼児を連れた女性をもっと大事にするべきという風潮を作っていくべきだろうと思う。


 挙げ句の果てに四低、すなわち


 ・低姿勢(家族に威張った態度をとらない)

 ・低依存(家事や子育てを妻にまかせっきりにしない)

 ・低リスク(リストラにあうリスクが少ない)

 ・低燃費(無駄なお金をつかわない)


 などということを言い出すようにならないようにもするべきだろう。


 こんなあほななことマスコミが垂れ流していれば、恋人なんかいらないし結婚なんかするわけ無いわ、なんで会社だけでなく家でもへいこらしないといけないんだ?


 となるのが当然だと思う。


「そういえば北条先輩、それと産婦人科の“命のゆりかご”の全国展開のほうはどうかな?」


「なんだかんだで堕胎により命が失われていくことを快く思わない産婦人科医の方々はいらっしゃるので、わたしの予想以上に早く進んでいますわ」


「ああ、それは良かった。

 これで救われる命も増えるだろうね」


「ええ、そうですわね」


 石巻の赤ちゃんあっせん事件の人みたいに産婦人科医として中絶手術をする中で、次第に自身の行為に葛藤を持ち始め、望まない妊娠や経済的に困難な状況を抱えた中絶であったとしても赤ちゃんにも生きる権利があるのではないかと考える人は決して少なくないらしい。


 望まない妊娠をして家族には言えない、誰にも言えない、友達にも言えないと誰にも相談できず、生まれてきた赤ん坊を殺してしまったりトイレに流したりなどという悲惨な例を減らすためにも、匿名が守られ、安全が感じられるような身近で相談しやすい窓口が全国的に増えることが必要だと思う。


 しかし、彼氏とかに妊娠を伝えたら連絡が取れなくなったなんて話が多いのは本当どうにかならないのかね。


 それはともかくフランスはそういった望まない妊娠を防ぐために、アフターピルは薬局で学生に無料配布、中学高校では希望者に校医が匿名無料配布したり、14週までの中絶は100%医療保険で払い戻し、未成年は保護者の同意なしで前払いなしで可能だったりする。


 日本では産婦人科が儲けたいがためにピルやアフターピルの販売を阻んできた結果として、望まないで子供を生んでしまい、その結果としての児童の虐待も増えたりしたわけであるんだが、フランスのように望まない妊娠をしないように制度化されている状況で、親がその上で納得して子を持てれば、幼児虐待などの予防にもなるわけだ。


 望まない妊娠を防ぐことは女性の保護だけではなく、「望まれずに生まれる子ども」を減らすことで児童虐待の連鎖を防ぐことにも成るわけだ。


「そういったことを防ぐためにもまず船橋市とかだけでも条例でアフターピルを簡単に手に入れられるようにしていきたいな。

 女性の望まない妊娠を防げない国のままではやっぱり駄目だ」


 俺がそう言うと北条先輩はうなずいた。


「確かにそうですわね」


 特定団体の金儲けのために少子化が進みやすくなってしまうというのは馬鹿らしい話だ。

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