別府もなかなかいい街だな

 さて、大牟田から博多を経由して別府まで特急をつかって移動すれば3時間半程度で大分県の別府へ到着。


 大分県は全国的に知名度が高い別府温泉や、由布院温泉をはじめとする多くの温泉を有し、源泉数・湧出量ともに日本一であり最大の売りが温泉なのは間違いないが、ふぐを始めとして関あじ、関さばなどの高級魚が有名な地域でもある。


 そして別府には城島高原ファミリーパークの他にラクチンチという小さな動物園と小さな遊園地が合わさった施設があるが、こちらは学校に上る前の子供がいる家族向けだが、アクセス的には別府市内にあるので別府やその周辺に住んでいる人にはこっちのほうが印象的だったりするらしいけどな。


 別府で上杉先生にまたマイクロバスを借りてもらい城島高原ファミリーパークまでは車を走らせ30分ほどで到着。


「じゃあまた二手に分かれようか」


 俺がそういうと斎藤さんがうなずく。


「そうね、そのほうがいいと思うわ」


 名前の通り位置的に高原に存在するため夏でも比較的涼しく、敷地も広すぎず狭すぎずで従業員の態度もグリーンヒルランドに比べてかなりいい。


 まあトイレとかの設備はどっこいどっこいだが。


「ここは涼しくていいな」


 俺がそういうと明智さんがうんうんとうなずいた。


「そうっすね、ここは夏に来るにはいいところっす」


 逆に言うと冬の寒さがきついんだろうということではあるけどな。


  アトラクションも絶叫アトラクションもあれば、のんびり過ごせるほのぼのしたアトラクションもあり、絶叫系が苦手な人間でも楽しめ、ほどほどに人はいるが待ち時間はさほどでもないのもいい。


 ちなみに城島高原にもプールやゴルフクラブがあり、ロイヤルスイートがある高級オフィシャルホテルもあるのでグリーンヒルランドに構成的にも似ているな。


 で3時間ほど遊んだら合流。


「今スグにテコ入れしなくてもよさそうではあるけど、ここに新しいアトラクションを追加するときはグリーンヒルランドとここは同時にやるべきかな」


 俺がそう言うと北条先輩もうなずいた。


「棲み分けを図るという意味でもそうしたほうが良いでしょう」


 九州の東側に住んでいる人はこっち、西側に住んでいる人はグリーンヒルランドと言うように住んでる場所によっていく場所を分けてもらうほうがおそらくいいだろう。


 もっとも福岡や鹿児島にも小さめの遊園地はあるんで地元の人はそっちに行くかもしれないけど。


 で、その後は別府温泉の買い取った温泉旅館へ向かった。


「お、なかなか風情があっていい感じだな」


「そうですわね。

 このあたりでも旅館はホテルに押されて経営は厳しいところが多いようですが」


「ホテルのほうがいいとは限らないんだけどな」


 部屋に荷物を置いて早速源泉かけ流しの温泉大浴場へ向かう。


「うん、いい湯だな。

 ホテルに比べれば宿泊客が少ない分、大浴場が混んでいないのはやっぱりいい」


 温泉を十分堪能した後ぐるっと旅館の中を見て回ったが清掃もちゃんと行き届いている。


 これなら宿泊客が不快に思うこともないだろう。


 そして夕食をとるために俺が広間に到着すると既に女性陣は集合済みで皆来ていた。


「部長遅いっすよ」


「こっちです」


 と明智さんと浅井さんが手をふってくるのでそっちへ向かう。


「ああ、みんなごめん、旅館を見て回ってたら遅くなっちまった」


 俺がそう言うと斉藤さんが苦笑していた。


「それはいいからとりあえず席についたほうがいいわよ」


「あ、うんそうだな」


 俺が席に着くと大皿が仲居さんによって運ばれてきた。


「てっさとてっさなみでございます」


「よし早速いただこうぜ」


 うす引きの華が咲いたようなお造りにされたふぐを大分特産のカボスのポン酢で紅葉卸ともに味わうがこれは絶品だ。


 てっさというのは鉄砲の刺身の意味で当たると死ぬことからフグは鉄砲といわれていたわけだ。


 てっさなみというのは夏のフグといわれる真ゴチのうす引きでこっちのほうがうまいかもしれない。


 どちらもこりこりぷりぷりしていてめちゃくちゃうまい。


「いや、ふぐやマゴチを食べたのは初めてだけどうめえなこれ」


「本当すごくおいしいです」


 浅井さんが笑って言うと横山さんもうなずいている。


「これは日記にしたためないと」


 去年の伊東ではおいしものを食べられたことで泣いていた浅井さんもずいぶん変わったよな、いいことだと思うけど。


「こりゃあ地酒にあうな」


 と日本酒でちびちびやっている上杉先生も上機嫌だ。


「熊本はメインは肉、別府はメインは魚という風に特徴がはっきり分かれてるのはいいな」


 そしてまた別の料理が運ばれてきた。


「地元野菜の地獄蒸しでございます」


 地獄蒸しは90度以上という高温な噴気を利用した、地獄蒸し釜で一気に蒸し上げる温泉地ならではの料理法。


 素材の旨みが凝縮され余分な油を落とすのでうまいしヘルシーな料理法である。


 もともとは菜っ葉やイモなどが蒸して食べられていたのだが、魚介類や肉類など多彩な素材で贅を尽くした地獄蒸し会席なども出てきた。


 卵、鶏肉、豚肉、クルマエビ、鯛、アワビ、茄子、シメジ、さつまいも、じゃがいも、キャベツなどが蒸しあがっており、パラパラと藻塩をかけたり、ポン酢をつけて食べるとこれもまたうまい。


「地獄蒸しプリンでございます」


 そして最後に運ばれてきたのがプリンだがこれもまたうまかった。


 同じようなことをできる地域は少ないだろうしこれは前面に押し出していくべきだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る