従業員の労働に対して相応と思う給料を払い、余暇に当てられる時間を確保させるのは大事だよな

 さて、俺が持っている遊園地や旅館などのバイトの場合、基本は時給1000円スタートで2000円までは昇給するし、社員なら年収300万円スタートで昇格すれば年収500万とか、遊園地や旅館などの経営陣になれば年収1000万以上になっている。


 ただ、年収300万円は月給換算だとおよそ20万円に年2回ボーナスでこの額だが、遊園地や旅館などはまだ週1休みの半休一日しかも休みは平日なうえでの日給は1万円相当だから必ずしも高いとも言えないかもしれないけどな。


 遊園地にせよ旅館にせよ、忙しい土日祝日に社員が休むのはほぼ不可能でもあるのだがそういった事情を考えれば本当はもう少し高くしたいところでもある。


 ちなみに金の無駄遣いにうるさい北条先輩だが、こういった給与形態については問題だと考えていない。


「ある程度の給与や賞与で従業員への労働に対しての見返りを与えるのと同時に、給与や賞与の支払いは税金対策としても重要ですもの」


「まあ、福利厚生のための施設も最終的には節税効果っていうのもあるよな」


「ええ、それに昇級昇格すれば給与を上げるのは多額の現金に触れるものが横領などの不正行為を起こさせないためにも有効ですわ。

 例えば銀行員の給与が基本高いのは不正を行って解雇されれば全く割に合わないからですし」


 会長がそういうので俺はうなずいた。


「ああ、そう言えば俺の父さんがそんな感じのこと言っていたな。

 さらに不正防止のため住宅ローン以外の借り入れは行員規定で一切禁止されているらしいけどな」


 俺がそう言うと北条先輩が言う。


「そういうローンを利用して不正を働いていたものが過去に大勢いたということでもありますわね」


「そう言えば銀行員は年に一回有給休暇を5日取って連続して1週間休むことが強制なのだけども、その休暇をとっている間に上司が部下の担当しているお客様からランダムで選んで訪問し、実際にお客様と話すことで融資などの状況を調べ、顧客口座から資金を勝手に使ったり、できもしない融資の口約束をしていたなら、その1週間の間に露見して内部的に”処理”とかされるらしいね」


「ええ、個人での隠蔽工作であればそれで不正が露見する可能性が非常に高いのですわ。

 無論銀行そのものが不正をしている場合はその限りではありませんが」


「金って人間を狂わせることもあるからめんどくさいよな。

 幸いうちに両親はそういう境遇だからか、俺がゲーム制作で金を稼いでいると言っても特にたかったりしないけど」


 俺がそう言うと斉藤さんもうなずいた。


「それはうちの父も同じね。

 証券会社も仲介者としての特別な立場を利用した不正等を行わないようにと、行政当局からいろいろ指導を受けているようよ」


 最上さんも苦笑しながら言う。


「うちのお父さんは大手商社マンだけど似たような感じみたい」


 そして朝倉さんも言った。


「うちの親は四井不動産の本部部長ですけど、そこまでうるさくはなかったと思うです」


「え、朝倉さんのお父さん四井不動産の本部部長なの?」


「なにかおかしいですか?」


「いや、そんなことは全然ないけど、四井不動産って日本最大級の不動産ディベロッパーだしちょっと驚いた」


「そうでもなければ海外との文通なんて簡単にさせてもらえないです」


「そういわれてみりゃそうか」


 会長が学校経営者の理事長の娘で金持ちなのはわかっていたけど、よく考えるとゲーム制作部の創立メンバーは結構父親が金持ってたんだな。


 まあ私立高校の3年間で必要となる費用の平均は300万円から400万円で、公立高校は100万円ほどだから私立に入れる生徒はたいていそれなりに裕福な家庭だったりするんだけど。


 ゲーム制作部関連であまり家庭での金銭トラブルが起きてないように見えるのも、もともと高額な金を扱いなれた父がいる家庭だからなのかもしれない。


 貧乏な家庭の子供が子役やアイドルで大ヒットして大金を稼いだり、野球選手や漫画家がアニメ化などでカネを稼いだと知ると親や兄弟が金を無心してトラブルになるなんて言うのもよくある話だしそうならなくてよかったと思うな。


 この時代は銀行、証券、商社、不動産とともに保険会社、電力会社、ガス会社、自動車メーカー、電機メーカー、製鉄会社、製薬会社、鉄道や空運なども結構高給取りだったりする。


 意外と土建とかはそこまででもないんだけどな。


 この時代でも貧困層がいるのは間違いないんだが、2020年代後半になると年収400万円以下が6割をしめるようになったりする。


 戦後の日本の高度経済成長は、日本人が優秀で、責任感が強く、真面目で、勤勉さがもたらしたというが実際のところは1960年から73年までの経済成長はベトナム戦争特需によるもので、日本のベトナム特需は 22億11百万ドルにも及び、日本の様々な産業に特需が舞い込んで財閥系も復活したが、ベトナムで使用されたナパーム弾の九二パーセントまでが日本で生産されていたりもするし、枯葉剤の原料やブルドーザーなどの重機に死体袋に至るまで日本で生産してベトナムに送られていたからそりゃあ儲かったわけだ。


 だからベトナム特需で儲けていた連中はオイルショックでバタバタ潰れていったわけだが。


 同じことは韓国にも言えて60年代に急速に経済成長したのは韓国人が頑張ったからではなくベトナム特需によるものであったりする。


 まあそれはともかくとして少子化対策を本気で考える以上は家庭より仕事を優先させるようなやり方、働いている人を大事にしないのは商売としても本末転倒であると思う。


 8時間寝て、8時間を仕事に当て、8時間の余暇を得るというのは、15分前行動やら通勤時間なども含めて考えれば事実上ほぼ不可能だが、可能な限りそれに近い状況には持っていかないと駄目だよな。


 実際には朝は洗面や食事、夕方に帰宅したら食事や入浴、場合によっては洗濯などの家事もやらなきゃならんのだから、そりゃ社会人は趣味に費やす時間も減るし、そうなれば当然消費行動もするわけがないし、時間も金もなければ恋愛をしている暇もないってわけだしやはり金と時間に余裕のある生活を出来るようにしていくべきだと思う。

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