やはりチェルノブイリ原発事故が起きてしまったか。

 4月15日アメリカによるリビア爆撃が開始された。


 4月の半ばに北条先輩から報告があった。


「まず零細製薬会社及び産婦人科専門病院の買収に成功いたしましたわ」


「あ、それは良かった。

 これで抗HIV薬の開発も始められるし、命のゆりかご計画も進められそうだね」


「ええ、それから日本夢観光を買収して横浜や奈良の夢幻ランドの経営権も手に入りましたし、谷津遊園の時代劇テーマパークも江戸時代用のものについては完成しましたので、まずはそこから撮影所やテーマパークとして一般開放いたします。

 明治大正用の撮影セットも現在増設中ですわ」


「そっちも進んで何よりだよ。

 そうしたらまずは横浜夢幻ランドのモノレール跡を使ってロープウェイを設置しないとな」


「たしかにあの辺りに関しての交通渋滞はかなりひどいようですし、そういたしますわ」


 そして4月26日ソ連のウクライナ・ソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所で大規模な爆発事故発生。


 これはチェルノブイリ原子力発電所の黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉の4号炉が炉心溶融ののち爆発し、放射性降下物がウクライナ・ベラルーシ・ロシア西部を中心にドイツ南部などまでの広範囲を汚染した、史上最悪の原子力事故の一つが発生した。


 事故当時、爆発した4号炉は操業休止中であり、外部電源喪失を想定した非常用発電系統の実験を行っていたが、この実験中に制御不能に陥り、炉心が融解、爆発したとされる。


 この爆発により、原子炉内の放射性物質は推定10トン前後放出されたが、これは広島に投下された原子爆弾であるリトルボーイの約400倍である。


 ソ連は事故発生の36時間後原発から10キロ圏内の地域に住む人々の避難を開始、1週間後には原発から30キロ圏内の地域でも避難が開始され、その後半径30キロ以内の地域での居住が禁止される。


 この事故に対して西側諸国が事態に気づき始めたのは、事故発生から2日が経過したあとで、4月28日の朝、スウェーデンのフォルスマルク原子力発電所にて、職員の靴から高線量の放射性物質が検出されたことが発覚のきっかけとなり、28日中にはスウェーデン政府の外交官がソ連政府と接触し、ソ連内で原子力事故が発生した事実がないか問い合わせたが、当初ソ連政府はその可能性を否定する回答を行ったが、スウェーデン側から国際原子力機関に事態を報告する意向を伝えられると、一転してチェルノブイリ原発で事故が発生した事実を認めた。


 爆発後も火災は止まらず、消火活動が続き、火災の鎮火と、放射線の遮断のためにホウ素を混入させた砂5000トンを直上からヘリコプターで4号炉に投下、さらに水蒸気爆発を防ぐため、下部水槽の排水、減速材として炉心内へ鉛の大量投入、液体窒素を注入して周囲から冷却、炉心温度を低下させるなどを行い、一時制御不能に陥っていた炉心内の核燃料の活動も次第に落ち着き、5月6日までに大規模な放射性物質の漏出は終わったとの見解をソ連政府は発表した。


 爆発した4号炉をコンクリートで封じ込めるために、延べ80万人の労働者が動員されたが、この4号炉を封じ込めるための構造物は石棺と呼ばれている。


 ソ連政府の発表による死者数は、運転員・消防士合わせて33名だが、事故の処理にあたった人員に多数の死者が確認されており、長期的にこの事故の死者数は数百人とも数十万人ともいわれるが、事故の放射線被曝と癌や白血病との因果関係を直接的に証明する手段はない。


 この事故が起きた原因だが、4号炉の外部電源が遮断された場合の非常用ディーゼル発電機起動完了に要する約40秒間、原子炉の蒸気タービンの惰性回転のみで各システムへの電力を充足できるか否かを確認するものであったのだが、炉心内部の熱出力が定格の1パーセントにまで下がってしまったことで、運転員は熱出力を回復するために、炉心内の制御棒を引き抜き、さらに重要な安全装置をすべて解除したうえで、実験を開始したことだ。


 この実験が行われた直接的な原因は、1981年のイスラエルによるイラクのオシラク原子炉への空爆で同炉が破壊された事件が遠因で、他国の軍事攻撃を受けた場合を想定した訓練を行うことで、攻撃により発電所の機能の一部が喪失した場合でも安全性を確保するための実験が大惨事を引き起こしたわけだ。


 この時行政当局の担当者の保身により事故の規模はさらに拡大した。


 原子力発電所の所長は、現地の線量計が測定限界値3.6レントゲンを振り切っている状況を目の当たりにし、事の重大さについては掌握していたものの、共産党中央委員会の原子力発電部部長に電話にて事故の第一報を入れた際に、自らの保身から「事故が発生したが原子炉は無事である」と虚偽の報告を行っているし、原発担当大臣が書記長などに対し「大丈夫です」と述べたため、全面的な対策が遅れたがこれがむしろ東欧諸国の離脱とソ連崩壊を早めた。


 ソ連政府は大惨事のさらなる拡大を止めるために、当初はロボットを用いて行われる予定だったその後の作業は、高レベル放射線により電子回路が破壊され頓挫したため多くの「解体作業者リクビダートル」がスタッフとして放射線の危険性を知らされず保護具もつけずに現場に送り込まれたことで放射線障害に苦しむことになった。


 それはそれとして日本では、欧州産パスタの販売量が急減し、逆に「放射線障害に効く」というデマが流れて、ヨード卵が買い占められて価格が高騰した。


 そして原子力発電そのものに対する一般市民の不安が急増したが政府は、「日本の原子炉はアメリカ型で、事故を起こしたソビエト型とは構造が異なり、同様の事故は起きない」という説明を行ったが、スリーマイル島原子力発電所事故によってアメリカ型原発もメルトダウン事故を起こしていること、日本の東京電力・東北電力・中部電力・北陸電力・中国電力が採用しているマークI型原発は経済性を優先するあまりに小型に造ったため、冷却システムなどに余裕がなく、地震や大規模停電になると爆発しやすいというような様々な欠点があることがアメリカ本国やスイスなどでは認識されており、“マークIを廃止すべき”という声もあるのだ。


 実際に1981年、アメリカ原子力規制委員会はマークIの安全性について詳細な検証を実施し「重大事故の時、マークIは他の型と比べて脆弱である事が分かった」と結論づけている。


「やはり地震の危険性の高い場所ではマークI型原発の廃炉は真剣に考えるべきか」


 俺はテレビ房総でマークⅠ型原子炉の原設計をしたニデール・フライデンボー氏を呼んで話をすることにした。


 “このままだと日本はやばい”の第三回目討論だな。


「さて、本日は前田健二さんとゲストのニデール・フライデンボーさんの対談となります」



「どうかよろしくおねがいします」


 彼は75年に同僚2人とともにGEを退職すると、マークⅠの製造中止を訴えてきた人物だ。


「こちらこそよろしくおねがいします」



「フライデンボーさんは日本の原発で多く使われているマークⅠ型原子炉の製造中止を訴えているのですね」


「ええ、81年の原発の全交流電源喪失時のシミュレーションで、原発が何らかの理由により電源を喪失した場合、原子炉の炉心の温度が急上昇するのですが、具体的には喪失後4時間をバッテリーで凌いだと仮定し、それが切れた事故発生の5時間後には温度が急上昇、6時間半で炉心溶融にいたり、圧力容器の底に核燃料が落ち、その30分後には圧力容器は破損。

 つまり外部電源を失ってから7時間で今回のチェルノブイリと同様の事故が起きると結論されているのです。

 そして8時間半で格納容器まで壊れ水素爆発が起き建屋が吹き飛びます」


「なぜそんな事が起こるのでしょうか?」


「原子炉の内部は通常は500度の高熱ですがそれでも、絶えず水を循環させて冷やしています。

 しかし、その冷却水が、ポンプが動かなくなることによりストップしてしまうと水がどんどん加熱されて沸騰したのち水蒸気になり、炉心がむき出しになることで圧力容器内は2500度にもなり、燃料棒の溶融が始まるのです」


「たしかにスリーマイル島原子力発電所事故でも同じような経過だったようですね」


「ええ、そしてマークⅠは極めて地震などに対して脆弱な構造であることからも考えて、少なくとも日本で使うのはやめるべきでしょう」


「その他にも問題がありそうですね」


「はい、圧力容器に付属する再循環ポンプは、その重さは数十トンもあるものですが、大地震時に再循環系の配管が壊れないかが問題になると思います。

 もし配管が壊れると、ここから冷却材が格納容器へ噴き出し、冷却材喪失事故という最大の悪夢になってしまうのです」


「それは怖いですね。

 アメリカなどではどうしているのでしょう」


「アメリカやスイスでは、予備の電線を何本も用意し、水素爆発を防ぐための「水素・リ・コンバイナース 」設置はすでに常識となっています」


「日本ではどちらも行われていませんね」


「ええ、そういった対策を行うと安全ではなかったことを証明してしまうからのようです」


「馬鹿な話ですね」


「全く馬鹿げた話ですがアメリカでも同様です。

 私は危険なマークⅠをやめるべきと会社に何度もそう言いましたが会社はそれではつぶれてしまうと取り合いませんでした」


「薬害エイズなどもそうですが、危険であることを役人が認めないことで被害が拡大するのはおかしな話ですね」


「安全よりの利益と保身が優先されるのは真嘆かわしいことです」


「本日はありがとうございました」


・・・


 その頃、電力会社や読買グループ、雷通、ミドリクロスや通商産業省や厚生省などの上層部が集まっていた。


「この放送は見過ごせんな」


「ああ、多少危険だからと原発をやめるなどありえん」


「非加熱製剤もそうですよ。

 こんなガキなどに何がわかるというのか」


“なるほどのう、他人の痛みはわからぬというわけか。

 ならおまえたちに痛みというものをたっぷりわからせてやろうぞ”


 そういった声がひびいいた後に彼らは足元に空いた穴に飲み込まれ原発関係者はチェルノブイリの象の足がある部屋と同等の放射線を受けた。


 その高線量被曝による染色体破壊により核型が完全に壊れ、新しい細胞が生成できない状態となり、まず白血球が生成されなくなったため、ありとあらゆる病気の苦痛を味わった後に皮膚や腸壁が形成されなくなり、全身が崩れていくが死んだらまたもとに戻り苦痛を延々と味わい続けるという地獄を、等活地獄における1日分500年繰り返すことになり、薬害エイズの関係者は非加熱製剤で満たされた血の池地獄に投げ込まれてたっぷりHIVウイルスを飲み込んでやはりエイズで苦しむという地獄を等活地獄における1日分500年繰り返すことになった。


 そして彼らはやってきたことや仲間の名前を全て洗いざらい白状して地上へ戻ったが彼らの悪事はアカヒ新聞やテレビアカヒが大々的に報道し、薬害エイズの関係者は彼らがエイズになったことで彼らも同性愛なのだと世間から認識されて家族や親族からは即刻離縁状を叩きつけられた。


 これにより電力会社は原発に対しての危険性を認めざるを得なくなり、外部電源に対しての予備発電機や予備の電線を何本も用意し、水素爆発を防ぐための「水素・リ・コンバイナース 」設置を行い、早めの廃炉や危険が少ないタイプの原子炉への置き換えを余儀なくされたのであった。

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