零細製薬会社を買い取って抗HIV薬とかを早めに開発させてみようか

 さて、世界初のエイズ患者が発見されたのは昭和56年(1981年)6月5日のアメリカ疾病予防管理センター。


 ロサンゼルス在住の同性愛者5人がエイズ患者として発表されたが、これはあくまで発見されたのがこの時というだけでそれ以前にもすでに感染している人物がいたかもしれない。


 で、昭和60年3月21日、アカヒ新聞は「血友病患者2人が輸入血液製剤でエイズウイルスに感染し、死亡した」と1面のトップ記事で報道し、さらに日本の血友病患者約5000人のうち約2000人がエイズに感染していると書かれて、その詳細は、昭和60年4月号の医学雑誌「代謝」に発表された。


 もともと帝都大学では昭和58年(1983年)7月に1人、昭和59年(1984年)11月に1人が日和見感染症と全身衰弱で死亡し、この2人を臨床症状からエイズと診断した。


 そして、米国の国立衛生研究所に患者の血液を送り、エイズの検査を依頼した結果、2人のエイズ感染が確認され、他の血友病患者50人の血液検査も依頼していたが、その結果、50人の血友病患者のうち23人がエイズ抗体陽性という事実がすでに判明していた。


 しかし厚生省エイズ研究班はこの2人をエイズ患者と認定しなかった。


 血液検査でエイズ感染が確定しているのであるから、血友病の治療のために輸入された血液製剤がエイズの感染源となったことは間違いなかったのにも関わらず。


 アカヒ新聞が血友病エイズをスクープした翌日、厚生省のエイズ調査検討委員会は男性アーティスト(36)を日本人エイズ患者第1号と公表した。


 この男性アーティストは米国在住のホモセクシャルで、多くの男性と性交渉を持っており、エイズ患者と認定されたが、読買新聞社をはじめとした各報道機関は、このアーティストを日本人エイズ第1号患者としてアカヒの報道を押しつぶすように大々的に報道し、この男性は米国に帰国したし同性愛のもの以外は感染しないので、エイズの2次感染の心配はないと付け加えた。


 ようは厚生省とマスコミはぐるになって、血友病患者の多数がエイズに感染している事実を隠蔽し、さらにエイズがホモセクシャルの疾患とする偏見を植え付けたのだ。


 さらにこの時点でエイズの感染源である非加熱製剤はまだ血友病患者に投与されていた。


 1985年4月に世界保健機関(WHO)が、世界各国に対し血友病患者の治療に加熱製剤を使用するよう勧告していたが、加熱製剤の早期承認を図る方針を示したが、開発が遅れていたミドリクロスに合わせるため、試験を1984年3月まで遅らせるよう『調整』したとされる。


 どちらにせよ昭和58年(1983年)の時点で血友病患者に対してのHIVウイルス感染は相当広まっていたのだろう。


 そしてHIVを体内から完全に排除できる治療法はない。


 この頃は有用な治療手段はなく発症すれば約50%が1年以内に死亡するとされていたエイズもその後の医学の進歩によって、抗HIV薬を2種類以上毎日服用することによりウイルスの増殖を抑え、エイズの発症を防ぐことで、健常時と変わらない日常生活を送ることができるようにはなっているが、HIVはRNAウイルスであるので抗生物質は効果がなく効果的なワクチンの開発にも成功していなかった。


 製薬会社と言うと売上が何千億もあるような大手メーカーが思い浮かぶが、実は従業員数が一桁二桁の零細企業のほうが圧倒的に多い。


 そして薬を製造するには医薬品製造業の許可が、販売もするなら医薬品製造販売業の許可も必要で製造工場の作りに制約があるが現状であれば零細製薬会社の買収は可能だと思う。


「北条先輩。

 船橋にある零細製薬会社を工場や開発部の人員ごと買い取って、抗HIV薬を開発させたいんだけどどうかな?」


「今度は製薬ですか。

 しかし開発できれば莫大なお金になるのは間違いありませんわね」


「うん、製薬に関しては抗生物質の薬剤耐性が問題になってきていることもあって、これから免疫力強化とかに変わっていくからね」


「しかしそううまくいくものでしょうか?」


「まあそのあたりは俺たちにはトロン関係で有名な大学にも伝手があるからそっちに力も借りるとかでなんとかなるんじゃないかな」


「なるほど、わかりましたわ。

 そのように話を勧めておきましょう」


「うん、いつも無茶言ってごめんね」


「全くですわ」


 まあこれで1990年代後半とかに開発される抗HIV薬を早く開発できれば救われる命も多いし、めちゃくちゃ金になるはずでもあるからうまくいってほしいな。


「買収資金的に厳しかったら、俺の父さんを介して銀行から100億とか200億までくらいなら融資はしてもらえると思うよ」


「そうですわね、融資を受けておいたほうが現状は間違いないですわね。

 融資の利息は節税と考えればよいですし」


「あと生命保険とかは斉藤さんのお父さんを経由して契約を結んでいくのはどうかな」


「なるほど、そちらも必要な方にはそうするようにいたしましょうか」


 まあ俺の父さんと斉藤さんのお父さんがこれで出世とかできればWin-Winだよな。

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