ようやくバッテリーバックアップ付きのRPGファンタジースターが作れそうだ

 さて、俺が企画書を書いて北条先輩が交渉し、バッテリーバックアップによるセーブデータの保持が出来るカセットのテスト生産と動作試験自体はSAGAが行っていたが、バッテリーバックアップのカセットについて、ようやくSAGAから正式に仕様に問題がないと言うことでバッテリーバックアップ付きソフトの生産許可が出た。


 なのでSAGAマーク3用ソフトのRPGであるファンタジースターの制作をようやく開始できそうだ。


「これで、途中でセーブが簡単にできるようになったからプレイ時間が長い、RPGやSLGも作りやすくなったな」


 俺がそう言うと先輩が頷いた。


「そうですわね。

 何しろ今まで例がなかったことですし、あちらでのテストにも結構な時間がかかりましたけど、これで自由に作れますわね」


 パソコンでは日付データのバックアップにボタン電池を使うということ自体は普通に行われているが、ゲーム機にはまだそういった機能が搭載されていないことや、そもそもハードがバッテリーバックアップを考慮した仕様になっていないことなどで結構慎重にテストしていたようだ。


 なにせセーブデータが吹き飛んだらダメージでかいからな。


 とはいえ、ホムコンでは昭和59年(1984年)に発売されている、周辺機器のホームベーシックにBASIC言語を組み込んだロムカセットが添付されているが、これにはすでにバッテリーバックアップ機能自体はついていた。


 とは言えメモリ容量がものすごく小さいことやホムコン本体のROMカセット接続部が緩んでいる場合、ベーシック用ROMカセットに指が触れた途端にフリーズしデータが失なわれるという「事故」も頻発したことで基本はテープでのデータ保存だったこともあり、結局ホームベーシックの売上げは芳しくなかったこともあって一種の黒歴史になっていたりもする。


「ともかく斎藤さんとナセルさんには頑張ってもらうことになるね。

 発売は7月の夏休み前を目指そう」


 俺がそう言うと斎藤さんはコクリと頷いた。


「ええ、わかっているわ」


 ナセルさんもビッと親指を立て言った


「HAHAHA、任せてください」


 フェニックスでもドラゴンクレストはもう制作に入っているはずだし、陣天堂からはゼルタの伝説がディスクシステムとともにもうすぐ発売されるけど、ファンタジースターの発売はおそらくドラゴンクレストより少し後の夏休みぐらいになると思うな。


 まあ、今年の年末のクリスマスにはCD-ROM付き自社ハードを発売する予定だが、CD-ROMは読み込みが遅いから純粋なアクション系ゲームには向かないので、九州三国志やプリンセスプロデューサーのようなパソコン向けソフトや日ノ本ファルコムやT&T、栄光などのパソコンゲームメーカーにも協力してもらってRPGやSLG、SRPGや音声付きアドベンチャーゲームなど読み込みが遅くても問題がないゲームの移植がメインになるはずだから、純粋なアクションやパズルは引き続きSAGAで作ってもらうことになると思うけど。


 デジタル・ディーヴァ・ストーリー女神召喚は自社ハードのローンチタイトルにするつもりだ。


「島津さんにはアドバンスド・テクノスから上がってきたバトルオブ北海道の製作に取り掛かってもらいますね」


「ああ、やってみるよ」


 あと大林源文先生にバトルオブ北海道の漫画化もしてもらおうか。


「北条先輩はダンバイと機動要塞ガンガンやマジンダーZ、ゲットダゼロボなんかのロボットを使ったスペシャルロボット大戦の企画を持っていってほしいんだ」


「わかりましたわ」


 うまく行けばスペシャルロボット大戦も自社ハードのローンチタイトルになるかな。


 なんだかんだでダンバイをサードパーティに取り込めれば結構大きい気がするんだよな。


 後は、現状経営状態があまり良くないらしいヘックスはいずれ様子を見て買収したいし、陣天堂と険悪になってきてるニャムコなんかもうちのハードのサードパーティに参入してほしいところだね。


 SAGAには落ちものパズルやリズムアクション系アーケードゲームを中心にソフトは提供していくつもりだけど。

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