高校生クイズに参加して優勝したよ。

 8月13日に石油ショック以後の海運不況により、転売目的で過剰な船を抱え込んでいた三光汽船は経営が行き詰まり、会社更生法を申請し倒産した。


 これは負債額が5,200億円という戦後最大規模の倒産事案で、バブル崩壊以前では実際に最大級であった。


(戦後日本最大の倒産負債額は2000年10月の協栄生命保険(株)で4兆5296億円)


 ”前”は123便の墜落事故の影で殆ど目立たないニュースであったが、それがなくなったこともありこれは大きく報道され、景気が上向いている半面でこういった事例があるということが再認識されたのである。


 さて、お盆にはいり高校生クイズの全国大会が開催される。


 この手の視聴者参加型クイズ番組はこの頃はまでは盛り上がっていたが、1985年秋に『アップダウンクイズ』『クイズ天国と地獄』が終了、翌1986年3月には『クイズタイムショック』『三枝の国盗りゲーム』『世界一周双六ゲーム』も相次いで終了し、視聴者参加型クイズ番組の全盛期は終わりを告げ、1992年に『史上最大!アメリカ横断ウルトラクイズ』がレギュラー開催を終了し『クイズ100人に聞きました』も終了したことでそれ以降はタレント出演型のものがほとんどとなっている。


 そうなった理由は内容のマンネリ化やクイズ内容の難易度が上がり過ぎ、参加者にも視聴者にもクイズの内容がわからないことなどがあったようだ。


 しかし高校生クイズはかなり長く生き残ったのは比較的珍解答をしても高校生だからと許される雰囲気があったからだろうが、高校生クイズも一時期難問クイズ路線に変更したことで参加者はなれを起こして最終的には地区大会廃止から参加者が集まらなくなって打ち切られていた。


 80年代の参加者は10万人以上いたし、第6回には約23万人の参加者を数えるなど大盛況だったが、90年代には5万人に減り、2008~2012年の超難問クイズ大会に特化したことで参加者はさらにどんどん減り、第34回(2014年)からはチーム3人1組から2人1組に変えて出場しやすくしたが、2010年代には全国でも参加者が1万人いるかどうかまで減ってしまっていたんだ。


 閑話休題一回戦が行われるのは場所は国立競技場で参加校は以下の通り。


北海道道立札幌西高校

 北海道道立旭川西高校 

 北海道道立旭川西高校 

 東北青森県県立木造高校 

 岩手県県立盛岡工業高校 

 宮城県私立東北工業大学電子工業高校

 宮城県県立第一女子高校

 北陸新潟県県立新津高校

 新潟県県立長岡高校

 関東栃木県県立宇都宮東高校

 群馬県県立伊勢崎商業高校 

 埼玉県県立春日部高校

 埼玉県県立春日部高校

 埼玉県県立春日部高校

 埼玉県県立八潮南高校 

 千葉県私立千葉経済高等学校

 東京都私立城北高校

 東京都都立武蔵野北高校 

 東京都私立女子聖学院高校 

 神奈川県立生田東高校

 神奈川県立生田東高校

 中部岐阜県県立加納高校

 静岡県私立浜松日体高校 

 愛知県私立滝学園高校

 愛知県県立豊橋南高校

 近畿滋賀県県立水口東高校

 大阪府府立扇町商業高校 

 大阪府府立島上高校 

 兵庫県県立西脇工業高校 

 兵庫県県立宝塚東高校 

 中国広島県市立基町高校

 広島県県立広島工業高校 

 広島県私立福山女子高校 

 四国・愛媛県県立新居浜西高校

 愛媛県市立商業高校 

 高知県県立高知追手前高校

 九州福岡県県立三池高校 

 熊本県熊本市立高校 

 熊本県県立第一高校 

 大分県県立日田高校


 偏差値的には60後半から70後半の高校が多いようだから、俺たちはかなり場違いに思われてるかもな。


「いやー、流石に全国大会だとみんな頭良さそうだな」


 俺がそう言うと会長が不敵に笑っていった。


「そうかも知れませんわね、でも負ける気はしませんわ」


 地区大会はお祭り気分で参加するやつも多いが、流石に全国大会に勝ち残るのレベルの高校はそれなりに偏差値が高いところが多いみたいだ。


 そしてまず一回戦はYES・NO走りクイズ で会場にYES・NOの円形サークルが用意されていて、問題が発表されたら答えだと思う方のサークルへ走って移動するやつだ。


 他にもドロンコクイズはそれぞれが描かれたスチロール板のうち、答えだと思う方に走って飛び込むが、正解ならばマットがあるが、不正解ならば泥水の中に落ちるというやつでこれ結構受けるんだよな。


 で、参加者や応援者が司会者の掛け声に合わせて「YES・NOコール」を起こすシーンは、高校生クイズの代名詞で一番印象的なクイズだろう。


「青春真っただ中、みんな燃えているか!!」


「おおーーー!」


 そして問題が発表された。


「さあ、イエスかノーか!」


 問題が発表されるとさっさとどちらかに移動するチームや相談しながら真ん中をウロウロしてるチームなどもいてなかなか面白い。


「これはどっちですの?」


「yesだね」


「じゃあそちらに行きましょう」


 というわけで俺たちはyesに移動


「正解はyes!」


「よっしゃ」


 というわけでまずここで約半数が脱落するが俺達は勝ち残った。


 次は準々決勝で3人がそれぞれ知力・体力・時の運担当に別れて挑戦する形式。


 知力は箱の中から問題の書かれている紙を取り出し回答するのだが紙によって最少50問~最多2000問と問題数や難易度が違うペーパークイズ、体力は長距離走の順位、時の運は自販機のあたりが出るまで買い続けるというもの。


「会長が体力担当でいい?」


「ええ、構いませんわよ」


「というか俺や斎藤さんでは体力担当は勝ち抜けないけどな」


 俺がそう言うと斉藤さんも頷いた。


「まあそうよね」


「うふふ、おまかせくださいませ」


「斉藤さんは時の運担当でいいかな?」


「ええ、いいわ」


「で俺が知力担当だな」


「ええ、それで構いませんわ」


「ええ、問題ないわ」


 で、クイズスタートだが会長はぶっちぎりで一位、斉藤さんも早めに抜け出せたし、俺もトップ通過だ。


「なんなんだあの高校の体力担当は」


「他の高校の男の代表を軽くぶっちぎってゴールしてるとか、あの学校の生徒は化物か?」


「まさか有名な陸上のマラソン選手だとか?」


「いやなんか今回の参加はゲーム製作部らしいぞ」


「ゲーム製作とあの速さとがなんで関係するんだ?」


 などと会長がめちゃくちゃ驚かれている。


「それに比べれば知力担当は運がいいよな」


「問題数が少ないやつを引き当てたらしいぞ」


「運だけならどこかで脱落するだけだろ」


 まあこれは言われている通り運要素も強くて俺が一番問題数が少ないものを引き当てたからみたいだけど。


「よしよし、まあ良い展開だな」


 準決勝の前にカラオケ採点による敗者復活戦があって、そこから勝ち抜け早押しクイズ。


 1問正解で勝ち抜けだが、誤答は即失格なシビアなクイズであったけど、俺たち3人はちゃんと勝ち抜きを決めて決勝戦は舞浜のアレの中で行われる。


「まさか、クイズ番組でここにくることになるとはね」


 決勝はこの大会恒例の10ポイント先制早押しクイズで流石に接戦になった。


 クイズの内容が簡単なものからゲキムズなものまで混ざっているのが面白いな。


「流石に決勝戦くらいになるときついか」


 だがなんとか10ポイントを先取できて10対7対7で俺たちは高校生クイズに優勝した。


「優勝おめでとうございます!」


 福止さんがマイクを向けてくるので俺は笑顔で言う。


「ありがとうございます、優勝できて嬉しいです」


 そして会長はいつもどおり。


「うふふふ、これで我が学校の名も全国に知れ渡り入学希望者も増えますわね」


「ア、ウンソウデスネ。

 むしろ会長個人の名前のほうが知られたかもだけど」


 ホント会長はぶれないな。


 俺たちは優勝チームとして優勝旗と賞金1000ドル(約23万5千円相当)に舞浜のアレの年間パスポートや旅行会社から全国周遊券などが授与された。


 ともかくこの頃の高校生クイズはウルトラクイズ路線であることと、司会者の福止さんの力量のたかさ、TV局が中抜きだけして子会社孫会社へ丸投げという形ではないのもあって、ものすごく盛り上がっているのは間違いないし、全国に俺たちの名も知れただろうか。


 テレビでの放送自体は8月28日だし、いろいろシーンは編集されるのだろうけどな。

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