慰安旅行の伊豆の方の行き先が決まったんで早速向かったよ。
さて買い物の後で会長がいろいろ調べてくれたようで、まず伊豆半島の宿は決まりそうだ。
「調べてみましたが伊東の南海館という老舗旅館がよさそうですわ」
「どういう感じなの旅館なのかな?」
「南海館は、伊東温泉の中心部の松川の川べりに位置する木造3階建で屋上部分には展望台もついた温泉旅館ですわね。
その歴史は古く東海道線が熱海駅まで開通した昭和3年(1928年に)に建築されたという由緒正しい老舗の旅館ですわ。
当時のオーナーである材木商の稲葉高太郎が金に糸目を付けず、桧や杉などの高級な木材や変木とよばれる形の変わった木々をふんだんに用いた美しい和風建築での旅館で、館内の各所に職人たちが趣向を凝らした建築美が施されているのですが、それは見る人が見なければわからないというものですわね。
温泉は大浴場二つに檜風呂・岩風呂・露天風呂があるようですわ」
「ああ、呉服とかも一見地味に見えるけど何十万円何百万円とかするやつがあるのと同じだね」
「そうですわね、今はシャンデリアとかの豪華なロビーのホテルのようにわかりやすい豪華さでないとあまり受けないようですわ」
このころのテレビCMでは「伊東に行くならポッポヤ!」という伊東ポッポヤホテルが有名だが、老舗の温泉旅館も結構あるんだけど、やはり古臭いとあんまり受けてないようだ。
「もったいない話だよな」
「ええ、戦前の趣を残した温泉旅館ですから風情を楽しむには良いかと思いますが、昭和33年(1958年)9月の狩野川台風で大きな被害を受けてその修繕費用がかかったこともあって経営状況は良くないようです」
「なるほどね、いい感じじゃないかな、じゃあ集合は船橋駅で朝7時でいいかな?」
「そこから総武快速線で東京まで行って後は東海道新幹線で熱海へ行って伊東線に乗り換えて行くのが良さそうですわね」
「私はそれでかまわないわ」
「わたしもいーよ」」
「了解です」
「わかったっす」
「んじゃ、みんな船橋の改札口で集合だな」
というわけで船橋の改札にみんなで集合して、総武横須賀線でまずは東京まで向かう。
ボックス席には俺・斉藤さん・会長・明智さんが座って、通路を挟んだ反対側に最上さん・朝倉さん・浅井さん・上杉先生が座ってぴったりだ。
「良ければこの古いウォークマンあげるですよ」
朝倉さんが浅井さんにウォークマンをあげようとしてるみたいだ。
「え、ええ? い、いいのですか?」
「どうせ古いやつはもう使わないですから」
「あ、ありがとうございます」
まあ、歌手兼声優を目指す浅井さんと音楽好きな朝倉さんはなんか気が合うんだろうな。
総武快速に乗ってる時間は30分位なのであっという間だ。
「さて東京で乗り換ですわね」
「ああ、けど東京駅の総武快速のホームは地下5階に位置するんで、エスカレーターなどで上がっていかないといけないから、乗り換えに時間がかかって大変だけどな」
「そうなのですか、総武快速線の東京駅に関しては少しばかり不便なのですわね」
「そうなんだよな、なんであんなに地下深くにしたのやらという気はするけどしょうがないんだ」
横須賀線は、元々は後の東北新幹線のホームの場所の地上にあったが総武快速線を東京駅に乗り入れさせて、横須賀線とつなげるのに、地上ではスペースがないので、地下鉄丸ノ内線のさらに下になったらしい。
で新幹線に乗り換えれば40分ほどでもう熱海だ。
「流石に新幹線だと早いな」
「乗車時間は東海道本線の約半分ほどですむようですわ」
で、伊東線の特急踊り子にのれば20分ほどで伊東に到着。
「およそ全部で2時間か、これくらいなら全然いいよな」
「ええ、意外と近いですわね。
1時間ほど余分に時間がかかっても良いならローカル線で来ても良いですし、東京から特急の踊り子号で、来てもいいはずですわ」
「まあ、どういうふうに来たり帰ったりするかは個人次第ってとこかな。
じゃあ、まず伊豆シャボテン公園に行ってみるか」
俺がそういうと会長が首を傾げた。
「わざわざ伊豆まできてサボテンを見に行くのですか?」
「ああ、サボテンじゃないんだここの名物は」
というわけでJR伊東駅からバスに乗ってシャボテン公園前で下車し入園するとそこには温泉に浸かるのほほんとしたでかい鼠のカピバラがいる。
「うわあ、可愛いです」
朝倉さんがそう言うが斉藤さんは首を傾げてる。
「かわいい……かしら?」
「まあ、見てると癒やされるのはまちがいがないけどな」
「まあ、そうっすね」
ここは昭和34年(1959年)10月に開演した施設で結構古いが、サボテンや多肉植物を集めた温室がたくさんあるとともに、カンガルーやチンパンジーやテナガザル、カピバラなどの動物やペリカン、インドクジャク、フラミンゴなどの鳥類なども飼育されているんだが、 伊豆シャボテン公園のカピバラは露天風呂に入る姿が人気でカピバラの露天風呂はここが元祖だ。
放し飼いにされている動物を見たり触ったり、えさをあげたり、ショーを見たりもできるし、特撮にでてきたという怪鳥やらでかいサボテンのオブジェや中南米の古代文明っぽいでかい石像も結構目を引く。
「これのおかげで最近人気がじわじわでてきてるらしいんだよな。
ちょっと変わった動物を飼うっていう意味では谷津遊園の参考になるとおもうぜ」
「なるほど、たしかに結構人がいますわね。
参考になるかもしれませんわ」
俺と会長がそう話してると最上さんが苦笑しながら行ってきた。
「あー、こういうところへ慰安旅行に来てまで仕事の話はやめよー」
「あ、ああ、最上さんの言うとおりかもな」
「たしかにそうですわね」
そのあとは近くにある伊豆ろう人形美術館だ。
「アホ殿の蝋人形がそっくりっすねー」
明智さんと最上さんは割と楽しんでる。
「徳川家康、織田信長が、後ろにいてよけい笑えるー」
「うう、リアルすぎで気持ち悪いです」
「そうですわね」
朝倉さんと会長にはちと不評だけどこれはしょうがないか。
そして伊東市の名物でもある、大室山へロープウェイで登る。
「す、すごくいい眺めです」
お椀をふせたような柔らかな曲線のシルエットが美しい大室山からは相模湾に浮かぶ大島、伊豆七島、天城山、富士山、箱根の山並などが見渡せるので実際にかなり良い眺めだ。
「ああ、ビールでも一杯やりたいところだな」
それから伊東海水浴場に行ってみんなで海水浴だ。
「さあ、泳ぎましょう」
「谷津遊園の時は海が汚すぎて泳げなかったしな」
というわけで午後は8月の海をみんなたっぷり堪能したぜ。
「うむ真夏の渚で飲むビールはうまいな」
いや、一人は海じゃなくビールを堪能してるけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます