あとのアトラクションはまあまあ程度だが当面は入れ替えたり新設は無しで行こうか
さて、谷津遊園の二大目玉アトラクションになるコークスクリューとゴーカートはその人気がなるほど納得するものがあった。
「とは言え、やっぱり10年前とかのアトラクションが多いから全体的にはちょっと古臭さは否めないな」
それでも定番のコーヒーカップとかのアトラクションはやっぱり面白くはあるけどな。
これはコーヒーカップの形をした回転遊具で中央に丸いテーブルがあり、これを両手で持って回すと腰を掛けているコーヒーカップ全体がぐるぐるまわるというもの。
「さあ、全力で回すっすよ!」
明智さんがそう言うと最上さんもそれに答えるように言う。
「そうよねー、全力で回してこそコーヒーカップよね」
「いや、二人とも程々に……」
などと俺が言っても当然二人は聞き入れるわけもなく、二人は楽しそうにめちゃめちゃ高速でコーヒーカップを回していて、一緒に乗ってる俺はめちゃくちゃ目が回った。
「まあ、そうなるわよね」
「大体予想通りです」
斉藤さんと朝倉さんは二人でのんびりコーヒーカップを回してるが、ゴーカートでこの二人の横に乗った時の気持ちがちょっと理解できたぜ。
その次にSURFJETという海上ジェットコースターに乗ったら先頭の俺の横に朝倉さんが乗り込んできた。
「あれ? 斉藤さんと一緒の後ろのほうがいいんじゃないの?」
「このくらいのコースターなら大丈夫です。
それに先頭のほうがずっと景色がいいです」
まあ、海上コースターといっても全部のコースが海上に有るわけではなくて、谷津干潟の上にコースが入っているうちの少しが海の上に少しせり出しているだけで、コースも登ったり降りたりだけのジェットコースター入門編といった感じの乗物なんだけど、逆にそれが怖くなくていいのかもしれない。
これができたのはなんと昭和33年(1958年)でバラ園や植物園の竣工と同時にできたらしく、全長670mのうち、170mが海上にあるという画期的なものなうえに日本一の長さを持つジェットコースターだったこともあって、行楽期には3時間待ちになることもあったらしいけど、その後干潟が埋め立てられて海上部分が縮小してしまったんで、現在ではちょっと名前負けしてる感じはあるけどな。
右側を海にしてカタンカタンとコースをコースターがゆっくり登っていって、それを登りきるとゆっくり左に180度カーブをするんだけど、その時のに見える目の前の景色は毎違いなく絶景だった。
俺はコースターを降りた後朝倉さんに聞いてみた。
「もしかして朝倉さんは、これに乗ったことあった」
「そうですよ。
あんまり怖くないコースターのほうが好きなんて子供っぽいとでも?」
「いやいや、一番前にのってあの景色を見たくなる気持ちはよくわかるなって思ったから聞いただけ」
「そうですか、でも本当にいい景色だと思います」
景色を楽しむジェットコースターって、結構珍しいけど本来の乗り物ってそういうものかもしれないな。
サイクルビーバーというミニジェットコースターは本当に子供向けのやつだけどこういうのは結構どこにでもあるよな。
交通公園はペダルを踏むとゆっくり動くバッテリーカーがあるが、これは幼稚園とか小学校低学年などの小さい子供向けだな。
そういった小さい子供はゴーカートには乗れないだろうからかえってちょうどいいかも。
GRAND PRIXというレール式ゴーカートやレール式クラシックカーもあってこれもどっちかと言うと小さい子供向けだと思う。
かなりのスピードが出て自在にハンドルやブレーキで運転できるゴーカートに乗ってしまうとやっぱり物足りない。
ROKROL(ロックンロール)っていう、乾燥機のドラムのように丸いものの中に椅子があってそれがぐるんぐるん回転する乗り物や、ビックリハウスは家の形をした中に設置されてる椅子に腰掛けるとそれが大きく揺れながら壁と天井がぐるぐる回り、まるで椅子がぐるぐる回ってるように錯覚するアトラクション。
壁が鏡張りになってるミラーハウスではよく顔をぶつけた。
猿が運転をしている設定のサルの豆汽車はとりあえずにラスに通り過ぎ、タイムマシンはライドに乗って恐竜達がいる中を通り過ぎていき、最後は火山の大噴火で恐竜たちが斃れていくというもので、舞浜のアレによくあるシステムに似てる。
「まあちょっと恐竜っていうのが古臭いけどな」
同じようなものは童話的な世界をライドに乗って進むメルヘンランドというものもあった。
いわゆるお化け屋敷であるドラキュラの館は入り口の上で棺桶の中のドラキュラの電動式人形が棺桶のフタを開けながらでてきては「ウハハハハハ我輩の家へようこそ諸君」と笑い声をあげている。
そしてカーテンをくぐって中に入ると、ドラキュラの住んでいる城の中が再現されていて、なぜか檻に閉じ込められたドラキュラが鉄格子を両手でつかんでガタガタと音を立てていたり、牢屋の中でギロチンされてたり、胸に杭を打ち込まれたりしているが、子供はともかく俺たちにはあんまり怖い感じはしない。
「できればこれは早めに改装したいか」
俺がそう言うと斉藤さんが頷いた。
「そうね。
去年の文化祭の私達の出し物のほうが多分怖いと思うわ」
それはちょっと言いすぎな気はするけどな。
俺は園内を一周する
みんなで先頭に座ってるけど、やっぱりこういうのって一番前に座って景色を見るのが楽しいんだよな。
ウォーターパレードという水路をゆらゆら揺れるホロのついた丸いゴンドラで揺られるアトラクションアラビアンボートというボートに揺られるアトラクションは意外と楽しかった。
「意外とこういうのもいいもんだな」
最上さんも割と気にいったらしい。
「そうですねー、自分で操縦できたらもっと面白そうですけど」
その他にもくるくる回る系統のトラバントやスペースセブンなどもあった。
後はバラ園に行ってみたが、夏はバラは剪定の時期だったので花は咲いていなかった。
「バラは春と秋だっけか」
俺がそう言うと斉藤さんが言った。
「ええ、そのはずね。
バラは暑さに弱いはずよ」
後、動物園とこども動物園があった場所にも行ったがここにも今はなにもいなかった。
「確か動物園にはホッキョクグマ、アシカ、ペンギンやゾウ、ライオン、トラ、ヒョウ、チンパンジー、マントヒヒ、サル、クマ、ヤマアラシ、シカ、クジャク、ハクチョウ、キジ、ペリカンなんかがいたらしいけどな」
俺がそう言うと最上さんが言った。
「とは言え、閉園しても動物たちはそのままって訳にはいかないでしょうしね」
「うん、みんな上野や千葉の方の動物園に引き取ってもらったはずだよ」
「象が殺されたりしなくてよかったと思いますよ」
「ああ、戦争のときには各地に動物園のでかい動物は殺されたらしいしな」
「じゃあここはどうします?」
「できれば他の動物園には、いなさそうな珍しい動物を飼育したいと思う」
「パンダとかコアラですか?」
「いやいや、そういうのは無理だ。
もうちょっと飼育しやすそうなウォンバットとかレッサーパンダとかアライグマとかカワウソとかかな」
「ウォンバット?」
「ウォンバットはオーストラリアに居るコアラの従兄弟みたいな動物だよ。
もっとでかくてずんぐりむっくりしてるけど人懐こくて可愛いらしいしあんまり特殊な餌もいらない」
「それはいいですね。
珍しいし飼育しやすそう」
「子供動物園はありきたりだけどポニーや山羊や羊やモルモットや兎でいいと思う」
「そうですね。
よく知ってる馴染みがある動物の方がそっちはいいと思います」
野球の人気球団である読買ガイアンツ発祥の地の記念碑には川下、長島、皇といったスター選手たちの手形が押してあったが、ここには谷津遊園内の谷津球場があった。
京成電鉄は、ガイアンツの運営会社の筆頭株主でもあったらしく、昭和9年(1934年)に正力竹太郎が全米選抜チームを日本へ招へいした際にはホームラン王のベープ・ルースなどもいて、日本側は東京六大学の選手を中心に全日本チームを結成し、谷津遊園内に急きょ整備した谷津球場で練習し、アメリカチームと試合をしたが、このときのチームがその後にプロ野球球団の東京ガイアンツとなってその後もずっと親しまれているのだ。
後に北海道に本拠地を移すけど二軍は船橋の北の鎌ヶ谷でキャンプする日の本ハムファイアーズや後に千葉に移転するけど現在は川崎球場を本拠にしてるオリエンツでもいいんだけど、やっぱ人気の差がでかいんだよな。
「これ結構、野球やサッカーの球団を誘致する理由になるかも?」
谷津遊園にはプールなどとは別にテニスコートなどがあるスポーツランドや総合運動会場があるんでそこをスタジアムにして球団を誘致することは可能だ。
ただしかなり金はかかるけど、相応にリターンはありそうな気もする。
その他海の家の売店とは別のビーチハウス大食堂兼休憩所となっている建物の中も結構広い。
「旅の芝居一座の観劇とかやれそうだなここ」
そして陽もくれたころに会長が戻ってきた。
「SAGAやその他のゲーム会社にお話をして入れ替えるものをリストアップしてきましたわ」
「さすが会長は仕事が早い」
リストに載ってるゲーム会社とゲームタイトルはこんな感じ。
アイテム=スパルタニアンX、スベランカー
アタラナイ=ゴーントレット
オメガ電子=ファイティングサッカー
カプコ=1942年、トントン、戦場の餓狼、魔界ビレッジ
コナミン=ハイパーオリンピック85、ダガース、ツインピーズ
SAGA=ジュエルス、スカイハリアー、ヘルプリフター、ハングアウト、忍者姫
タイト=フライングデストロイヤー、タイムガール、忍者の伝説
ニャムコ=フライキッド、スターブラスター、ディグ&ダグ2、ドラゴンクラッシャー、メトロクラス、スーパーゼピウス、ドルーガの塔、パクパクランド
日の本物産=ヘルクレスタ
陣天堂=スーパーパンチャーアウト
「なるほど、特殊筐体にゲームも含めて結構な人気のゲームが揃っていそうだね」
そう言えば人気パズルゲームになる上海のライセンスは早く取っておきたいところだな。
「あとSAGAから新しいクレーンゲームの人形キャッチャーというものもすすめられましたけど、あなたの意見を聞いてからにしようと思いまして、一旦保留しました」
「ああ、それは人形をクレーンを使って取るクレーンゲームだけど、特に女の子に人気がでるはずだから入れておいてほしい」
「わかりましたわ」
その他にも、もぐらたたきとか、占いゲーム、腕相撲マシン、パンチングマシン、ポンカン飴などのお菓子をひろえるお菓子ランドというクレーンゲーム、日ノ本物産のメダルゲームや、家鴨が競争するメダルレースゲーム、ピンボールにジュークボックスも設置することにした。
メインはあくまでもビデオゲームの方だけどな。
「ジュークボックスが設置できてよかったです」
朝倉さんが素直に喜んでいる。
「音楽がメインのゲームもいずれ作りたいな」
「それはとてもいいアイデアです」
音ゲーはシステム的に作るのは現状のアーケードゲームのスペックでもおそらく問題はないと思うが通信機能はないから曲の種類は限られそうではあるな。
そして暗くなってきて電飾が綺麗なメリーゴーラウンドに皆で乗ってから、最後は観覧車にのる。
「夜景が綺麗です」
朝倉さんが外を見ながらそういう。
「このあたりは高層ビルもないから昼間は富士山が見えるし、夜は東京湾の夜景が綺麗に見えるんだよな」
「浦安の方で花火が上がってますわね」
会長がそう言うと確かに花火が上がっていた。
「ああ、舞浜のアレは夜に電飾パレードしながら花火も打ち上げるんだよな」
「随分とお金をかけてますわよね」
「なにせ総工費が1000億以上かかってるらしいからな。
宣伝や出し物も金をかけて来場者を増やして元を取らざるを得ないわけだけど、最悪は住宅地として売るつもりらしいよ」
「こちらのほうが安定して稼げそうな気がしますが」
「とは言え入場者数で3倍以上差があるからね。
安定より博打をとったんじゃないかな」
そこで俺はコホンと咳払いをする。
「とりあえずやりたいアイデアが色々とみんなから上がったから、かかる費用や効果、施工にかかる時間とかも含めて優先順位をつけた後、会長と話し合ってどんどんやっていきたい」
「わかりましたわ」
「みんなもこれからゲーム製作だけじゃなく、こっちに経営のアイデアがあったらどんどん出していってほしい。
言うだけならタダだしな。
実際に金になるかどうか、やるかどうかは、俺と会長で判断するけど、これからもみんなで頑張ろうな」
「わかったわ」
「わかりましたわ」
「わかったよー」
「わかったです」
「わかったっすよ」
こうして谷津遊園のオープン前に俺たちは貸し切りでアトラクションを楽しみつつ、これからも頑張ることを再度確認したんだ。
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