谷津遊園のゴーカートはやっぱいいな、世の中にはハンドルを握らせちゃいけない人間もいることもよくわかったけど
さて、コークスクリューとともに閉園前の谷津遊園でのもう一つの人気アトラクションはゴーカートだったはずだ。
「次はゴーカート乗り場に行って、ゴーカートに乗ってみよう」
「わかったわ」
斉藤さんはそう言ったけど最上さんが首を傾げてる。
「ゴーカートですか、なにが人気なんでしょうね」
「ここのゴーカートはコースの幅が広い上にコースも長くて、かなり自由に運転できるから本当のサーキットの縮小版的な感覚が味わえるんだよ。
カートも、本式のエンジンが付いてる本格的なものだし、結構スピードも出るしな」
自分できちんと運転して、ゴール地点に帰ってこないといつまでもコースの上にいたりすると言うのは、その後のこういった遊園地にアトラクションではかなり珍しい。
レールの上を走るだけなのも少なくないしな。
そもそも隣の船橋ヘルスセンターにはバイクサーキットがあったくらいだけど、そっちはヘルスセンターが閉園した後はオートレース場になった。
「なんかおもしろそうっすね」
それを聞いて明智さんはワクワクしてるようだ。
ゴーカート乗り場は正門からはなれて遠い東南側にあり、乗り場はカートコースの内側にあって、陸橋上で順番待ちをするのが名物だったりしたはずだが当然俺たちには順番待ちはない。
そこへ到着する前に通りがかったのがまず、GHQのダレダヨ・マッサーカー元帥が乗っていたと言われるL-1649 スターライナーが展示されていたと言われるスペース。
ただこれは終戦直後はともかく最近ではほぼ見られることもなくなっていて、売れるはずもないと閉園とともに解体されてしまったので今は空きスペースがあるだけだ。
「まあ、マッサーカー元帥が乗っていたとか言われている飛行機があっても今じゃ誰も見ないよな」
しかも、その飛行機はマッサーカー元帥が実際乗っていたというわけではなくその同型の機体であるだけらしい。
そこをすぎると遊覧ヘリコプターとセスナの遊覧飛行機用のヘリポートや飛行場やそれぞれの格納庫があるスペースだ。
こちらもヘリコプターやセスナの機体自体は売れてしまったようなので機体はなく、今はヘリポートや滑走路と格納庫が残ってるだけだが、当時は30分5千円、1時間1万円とかなり高いものでも珍しがって割とヘリやセスナは上空を跳んでいたらしい。
10年前の月給は平均で131000円と現在の月給の半分だから相当高かったはずなんだけどな。
「ここはいろんなラジコンカーやミニ四駆を走らせられるスペースにするのがいいかもな。
今じゃ自由にラジコンを走らせたり飛ばせる場所は少ないし」
俺がそういうと斎藤さんがうなずいた。
「都市部では空地も少ないし、ラジコンを道路で走らせたら怒られるものね」
「うん、そうなんだ。
だから室内でも遊べるミニ四駆が人気になってきてるんだと思う。
ああ、なんなら格納庫の中ではミニ四駆だけじゃなくてNゲージとかの鉄道系も走らせられるようにしてもいいかもな。
滑走路があるからラジコン飛行機やヘリコプターも飛ばしやすいだろうし、オフロードバギーは砂浜を走らせても楽しそうだし、軍艦とかヨットのラジコンならボート乗り場で動かしても楽しそうだ」
そして俺はヘリやセスナに関してはあんまり興味がなかったのかほとんど覚えてないがゴーカートはよく覚えてる。
「あと冬の同人誌即売会をこの格納庫でやったりしてもいいかもな」
俺がそういうと斎藤さんが聞き返してきた。
「同人即売会?」
「ああ、今じゃかなりに人数も参加してるし、デッサン力はプロ顔負けな同人作家少なくないから、買った出版社のほうで漫画を描いてもらって書店で売ろうと思ってる」
「ストーリー的にダメな場合は原作者をつければいいというわけね」
「うん、そういうこと」
そしてあたりを見渡すと整地されているがなんも無いスペースも結構ある
「しかし実質的には広い場所が開いてるんだな。
ただでさえ敷地中に全部アトラクションがあるわけじゃないのに」
舞浜のアレのようにさらなる拡張を考えていたのか、それとも元は広大な塩田でそれを使い切れなかっただけかわからないが、谷津遊園はこういった今は使われていないという施設があるからだけではなく、そもそも結構な敷地が現状は空いていたりする。
「いろいろ作れそうで良いことじゃないっすか」
明智さんが笑いながらそういう。
「まあたしかにな」
ちなみにひっそりラジウム温泉の施設もあった。
「こっちにも温泉施設があったんだな」
多分海水プールや海水浴のあとに入るための施設だろう、
隣にあった船橋ヘルスセンターにはローマ風呂・岩風呂・牛乳風呂・子供風呂・家族風呂・サウナなど沢山の温泉施設や舞台付きの宴会場、9時だよ全員集合のメンバーがよく来て生放送していた劇場などもあったはずで、その施設が残っていれば谷津遊園の空いたスペースに移転できたかもしれないのでちょっともったいないが、既にあちらの跡地にはららぽーとや室内スキー場のザウルスやでかいホテルや団地などができていてすでに影も形もない。
ゴルフ場やボウリング場、美術館や卓球場、ローラースケート場に人工芝スキー場、野球場にテニスコートや海に出ていく海賊船の遊覧船、ドッグレース場に宿泊施設などもあったから谷津遊園に来た後そっちの温泉に入ってそのまま泊まっていった人も多いんじゃないかな。
「まあ温泉施設があるのはいいな。
開いてる場所はオートキャンプやテントキャンプもできて、バンガローやコテージ、囲炉裏のある和風民家もあるキャンプ場にしてみるか。
食堂は今年のダイヤ改正で殆どなくなった特急の食堂車を譲り受けてそこで食べてもらいたいな」
俺がそう言うと斉藤さんが不思議そうに言った。
「普通にホテルは作らないのかしら?」
「ああ、ららぽーとの北に今年できたホテルサンライトガーデンららぽーとは結婚式に使うチャペルや宴会場をいくつも備えた船橋市内最大のホテルだけど、正直そこまで客室が埋まってるわけじゃないみたい。
だから入場券とセットでホテルの宿泊券を少し安く売って、そこからちょっとマージンをもらうつもり、俺達もホテルを立てたら過当競争になるし、ホテルを立てればその費用も莫大な額になるはずだからね」
舞浜のアレの宿泊客も見込んで作ったらしいけど、あそこに行くにはちょっとはなれすぎてるし、ららぽーとでの買い物をするのにわざわざ泊りがけで買い物をする奴はそこまで多くないだろう。
かと言って出張に使うにもまだ京葉線も開通してない場所では場所が悪すぎる。
なので交渉は会長に任せてるけど多分ホテルとの提携はできると思う。
ホテルの計画当時は谷津遊園が閉園することは考えていなかっただろうしな。
「なるほど、そういうことなのね」
「で、今はキャンピングカーがすごく売れてるらしいけど、キャンピングカーで泊まれるキャンプ場はそう多くないし、いいかなって。
もちろんキャンプ場ではキャンプファイヤーやキャンプでよくある飯盒で米が炊ける竈やバーベキューセットを用意してバーベキューが楽しめるように施設は用意するつもり」
朝倉さんがウンウン頷いた。
「広い場所でのバーベキューはとてもいいです」
「だろ?」
そんな事を言っている間にゴーカート乗り場についた。
コークスクリューの時と同じように俺がゴーカートに一人で乗って、明智さんは斎藤さんと、最上さんが朝倉さんと一緒に乗ってそれぞれハンドルを握ってる。
「よし、誰が一番最初にゴールできるか競争しようぜ」
「ふふふ、一位は自分がもらうっすよ」
「そうはいかないよー」
「じゃあ行くぜ、スタート!」
とスタートしたら二人はめちゃくちゃアクセルベタ踏みで飛ばしてお互いのカートを幅寄せし合ったりしながら競争している。
「ありゃもしかしてハンドル握ると性格変わるタイプか?
ゴーカートのぶつけ合いとか幅寄せして相手を壁にぶつけるのはなしだぞー!」
俺がそう言っても二人はちっとも聞こえていないっぽく、その後もデッドヒートを繰り広げながらほぼ同時にゴールして俺はどべだった。
「あー楽しかったっす」
明智さんがそう言うと斉藤さんがいやいやと首を振って言う。
「私は怖かったわ」
「本当に楽しかったー」
最上さんが言うその横で朝倉さんはふるふる震えている。
「もう二度と隣には座らないです」
運転者と同乗者のテンション差がまたすごいな、こういうのは運転してる人間は平気でも助手席に座ってる人間はめちゃ怖いもんだけど。
「でもこれで人気があった理由がわかったっす」
「ですねー、何回でも乗りたいですよーこれ」
明智さんと最上さんがそう言ったが俺は首を横に振った。
「いやそのうち大きな事故を起こしそうだからもうゴーカートはやめておこうぜ」
それにウンウンとうなずく斎藤さんと朝倉さん。
「そうねまだ他にも見て回るべきでしょうしね」
「そのとおりです」
というわけでゴーカート乗り場をはなれて俺たちは残りのアトラクションも見て回ることにした。
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