東海道物語
たんじぇんと
第1話 汽笛一聲新橋を
汽笛一聲新橋を はや我が汽車は離れたり
愛宕の山に入りのこる 月を旅路の友として
駅の発車メロディーにも用いられている鉄道唱歌。その第1集は東海道篇で、上述の歌詞はその第1番である。新橋駅は、日本初の鉄道が開業した、鉄道発祥の地である。現在の新橋駅は、かつての新橋駅と異なる場所にあり、また、新橋駅を始発とする東海道本線の列車は存在しないが、長距離の旅に出かける時、私はこの歌詞をなにかと口ずさんでいる。
現代日本において、旅行に行く、というと、多くの人が新幹線や航空機などを使うだろう。高速化が進み、便利になった。しかし、だからこそ、鈍行列車で遠くに出かける、という旅にも魅力を感じるのである。
かくして私は旅に出かけることにした。幸い、JRは青春18きっぷという、JR全線の普通列車に乗り放題となる切符を期間限定ではあるが発売している。ちょうど友人から声をかけられたため、一緒に出かけることにした。
旅のスタートは東京駅。なんだ、新橋駅についてあれだけ書いておきながら東京駅か、と思われるかもしれないが、これは単純に友人との待ち合わせの都合なので目を瞑ってください。
第一走者は東海道線、快速アクティー熱海行き。ドアが閉まり、列車が発車する。ここから、東海道本線全線、589.340kmを走破する。
次の停車駅は新橋。ところで、この辺りは一瞬だけ国会議事堂が見えるのだが、残念ながら京浜東北線と被り見えなかった。品川、川崎、横浜と停車していく。見慣れた景色だが、しばらくお別れだ。
さて、神奈川県を西へ進み、まもなく国府津。ここから御殿場線が分岐する。かつては御殿場線が東海道本線であった。そのため、ここからしばらく鉄道唱歌ともお別れ。
次は小田原。乗り換え案内で新幹線と言われる。車掌さんが「今度の下りはひかり号…」と案内をしている。ここで乗り換えれば何時間先行するのだろうか。
小田原を出ると、早川、根府川と続く。根府川駅には猿が出るが、この日は全くいなかった。いや、常にいるわけじゃないので普段通りではあるが。この辺りは左側に海が見える。美しい景色だ。
同時に山深い地域でもある。トンネルをいくつもくぐり、気づいたら静岡県に入っていた。まもなく、終点、熱海。「本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。」ああ、乗り慣れたJR東日本もここまでか。
初めて降り立った熱海の地だが、第一印象はとにかく人が多い、だ。さすが新幹線1本で行ける温泉街。ここでお昼ご飯を食べ、さらに西を目指すことにした。
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