黒罰闇

黒煙草

【人影】罰【闇】

この世界の法則は罪と罰で出来ている


そして、この世界の人間が最も冒してはならない罪が『三十の時を経た処女童貞のモノ達』への罰だ


30歳を迎えた人間は生殖機能を失うという


罪を背負い

罰を得る


罰を得た人間は殺し合いを余儀なくされ、生き残ったものたちは次の10年目にて新たな罰を得る


10年、また10年と罰を得たものは超越者と呼ばれ、全てを支配できると言われて────…


──────────────────


目の前に現れた白い看板の内容は、僕にとってよく分からなかった


確かに三十まで童貞だったが、ここまで言われる筋合いはなかった


小中高、成績も良く、いい大学にも行き、会社に就職しても他者との関係も良好、30歳で中間管理職まで上り詰めた


妻もおり、互いに三十になったら子供を作ろうと計画性を持って、日々を共に過ごしてきた


それが悪いことであるかのように、白い看板は飄々と僕を煽っていた


今日この日、誕生した日の零時を迎えた僕にとって、祝いの言葉が白い看板であれば、誰かの悪ふざけだろうという思考に落ち着く


「はぁ…まったく、澤田か?白石なのかー?」


僕の叫びは、真夜中の裏路地に消え去る


当然だ、0を回り日付が変わる時刻


だがそれでも反応がない闇の先

刻一刻と僕の心を蝕む恐怖と焦り


正直、恐怖は分かる。夜にしては先が闇なのだ

では焦りとは?


「お、おーい!誰かいるんだろう?」


そう、人の気配はあるのだ

少し先の電柱、夜中の黒色をも塗りつぶす真っ黒な人影


その人影に言葉を送るも、無視しているのか、何かを待っているかのように佇んでいるのだ


仕方なく、仕方なくだが自宅へと続く帰路なので、確認も含めて急ぎ足で帰宅することにした


濃い黒の人影が近づく

僕が歩み寄っているはずなのに、近づくような感覚


不思議ではあった、しかし必然とも思えた

僕が近づいているのだ、少なくとも確認のために



そして、とうとう隣に来た

相手はフードを被っていて、電灯のない電柱の下で僕を見ていた


僕は勇気を振り絞り、声をかける


「あ、ぁのー…僕に何か用ですか?」


確認するだけのはずが、声までかけるとなると、僕は頭がおかしくなってしまったのだろうと思惑する


「──…、──…──……!」


声を発したようだが、聞き取れない

日本語と英語の二か国語を熟知している僕でも聞き取れないとなれば、他国の言語となるが…本当に別の国か?


「──から、おめぇさんは馬鹿なんだよ」



聞き取れた言葉は

僕を貶し


闇に葬った

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