第30話

 ……あたし、なにしてンだか。

 せっかくのオフなのに、ベッドの上で寝転がってるだけ。また何日かしたら、部活の練習始まンのに……。

「ハァー……」

 ほんと、バカみたいだ。

 なんてことないフリして、内心気にしまくって、心臓バクバクいってンの、バレてないか怖くてしょうがなかった。

 あたし、普通の後輩が出来てた? 普通の、友達みたいな関係、戻れてた?


 自問自答……いや、答えは返ってこない。自分じゃ、もうなにもわからない。


 先輩に想いを伝えて、報われなかった。中学のころからわかってたことだけど、もしかして、なんて。

 期待して、絶望して。

 

 どれだけ勝手なンだろう、あたしって。


 ……でも、でもさ。

 あたしの想いをわかってたくせに、なンも言わなかった先輩もおかしいよね。

 しかも、なにあの彼女サン。指輪とか、こ、子作りって……。

 そ、そういうのってするもンなの……? あたしら、まだ高校生なのに。

 わけわかンないし、一目惚れとか言ってたし。ほンと、わかンない……。


 しかも、あの彼女サンは絶対に性格悪い。

 あたしがいたら、目の敵みたいに睨ンでくるし。しかも目の前でイチャイチャしてた。頭イッてるでしょ、あンなの。


 ……あれで、ほンとに終わりなのか。あたしの恋って。


 ……なンか、やだなぁ。


 せっかく高校まで同じにしたのに、あの文化祭の、あンな終わり方だけなンて。


 先輩だって、彼女サンだって、みンなみンな勝手なンだから。


 あたしだって、もうちょっと勝手にしていいっしょ。


 台風が過ぎて、外はすっかり晴れてる。……あたしはインドアじゃないし、体を動かすのが好きだから、こンな時は外に出たくなる。


 ……あれで終わったのかもしれないけど、まだあたし達は。


 先輩で、後輩だから。


 指がスマホの上で踊る。なンだかンだ、あたしってまだ先輩のこと……。


 ……こんないじらしいカワイイ後輩の、カワイイワガママくらい、聞いてよね。




 震えるスマートフォン。白色で、透明なカバーの付いた晴我くんのスマホ。

 晴我くんのスマホを手に取って、画面を見てみる。

 メッセージの通知。……あの女から、一件だけ。

『たまには後輩と遊べ!』

 冗談口調で、おふざけのつもりで送りました、なんて言い訳を前置きしてそうな文章。私の晴我くんに、何様のつもり?

 ……晴我くんはキッパリ断った。私の目の前で、あの女のことをただの後輩だって。私のことが好きだって言ってくれた。

 不安なんてない……そう言い切れたら、どんなにいいんだろう。

 私の横で、裸で眠る晴我くん。腕を伸ばして、私の体をさっきまで抱きしめていた。

 帰ってきてから、いっぱい愛し合って、確かめ合って。満たされた身体と心が、幸せだと訴えかけてくる。

 晴我くんは私のもので、私は晴我くんのもの。それは、二人の間で決めたこと。

「……邪魔なやつは、みんな消えちゃえばいいのにね」

 私たちの間を引き裂こうとしたり、割って入ろうとしてくるようなやつ。みんなみんな、邪魔。


 私たち、こーんなに愛し合ってるもんね?

 

 あたたかい晴我くんの体を抱きしめて、私は晴我くんの無防備な脇腹に軽いキスをする。


 くすぐったそうに、晴我くんの体が少し揺れた。

 

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