第70話 好きな人

 風磨の告白の結果は言うまでもないだろう。


 俺が考えた作戦は相当浅はかなものではあったが、最後はハッピーエンドを迎えられたのだから結果オーライだ。


 嵐山での散策を終えた俺たちはその後、2箇所の観光名所を巡ってから昨日と同じホテルへと帰着した。


 風磨と花宮が付き合ったのは良い事なのだが、風磨と花宮の初々しい恋人ムードを見せつけられる事となった俺は若干イラっとした。


 自分で2人を付き合わせておいて矛盾してる。


「なぁ祐。今ホテルに到着して気づいたこと言っていいか?」

「ん? どうした」

「俺たちの部屋に楓と祐奈ちゃんが泊まってるわけじゃないか」

「ああ、女の子が嫌いって言ってたのによく我慢してたな」

「それはまぁいいんだけどさ。俺と祐の部屋に楓と祐奈ちゃんが泊まってるって咲良にバレたら怒られないか?」

「……確かに‼︎」


 風磨に言われるまで気がつかなかったが、そう言われてみれば確かにそうだ。


 風磨に彼女がいなければ同じ部屋に女の子が寝ていたって何も気にすることはないが、今の風磨には花宮という彼女がいる。


 祐奈と楓の部屋のベッドが壊れてしまったからとはいえ、自分の彼氏と同じ部屋で女の子2人が寝ていると花宮が知ったら雷が落ちるぞ。


「そうだ、いっその事こと花宮にもこの部屋に来て貰えばいいんじゃないか?」

「それだと委員長が1人になるだろ」

「それなら委員長も俺たちの部屋に呼ぼう。俺たちは最悪ソファーかどっかで寝てればいいだろ」

「なるほどな‼︎ ……ってなるわけないだろ。余計状況をややこしくしてどうすんだよ」

「ごめん。ちょっと焦ってるわ」


 こんな状況だと言うのに当の本人は意外と冷静で、俺より遥かに落ち着いていた。


「あ、それなら俺たちが楓と祐奈ちゃんが寝泊りする予定だった部屋に行こうぜ」

「そうだな。ベッドなんてなくても床で寝転がってればいいんだもんな」


 その提案を先生に伝え、無事承認された俺たちは祐奈と楓が泊まる予定だった部屋へと荷物を持って場所を移した。

 昨日のように祐奈と楓が同じ部屋にいる状況ってのも楽しいが、男だけで過ごすのも意外と楽しいかもしれない。


 晩飯と風呂を順当に済ませた俺たちは自分の部屋に戻ってきた。


 原則、異性の部屋に行くことをルールで禁じられているため、俺は祐奈と楓に会いに行くことはできないし、風磨も花宮に会いに行くことはできない。


 俺たちは大人しく昼間に買った駄菓子とジュースで晩酌を始めた。


「おめでとう。花宮と付き合えて良かったな。まさか風磨が女性恐怖症だとは思わなかったけど」

「俺だって自分が女の子のことを怖いと思う日が来るなんて思ってなかったよ。それに、もう完全に怖くないと言えば嘘になるしな」

「え、そうなのか?」

「ああ。咲良と話すのも実はちょっと怖い。嫌われたらどうしようって思うとな」


 そんなかっこいい顔面を拵えてるくせに、女の子に嫌われるわけがないだろう。


「祐はどうなんだ? 祐奈ちゃんのこと、好きなんだろ?」


 ……は? 俺が祐奈を?

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