勇者なのか馬鹿なのか……

side:藤村 理央


蓮の奴に無理矢理付き合わされて遥姉達と一緒に昼ご飯を食べている俺。本当は遥姉を敵に回したくないし、出来る事なら昼ご飯を一緒にしたいと思わないんだけど、なんというか……今は離れているとは言え血の繋がった一個上の姉を放っておけないのもあって一応付き合ってやっているが……


どうしよう……今日だけは蓮を無視してここから逃げたい……


「…………」


「…………」


「…………」


遥姉に桔梗姉、それと遥姉の想い人の高橋先生が3人で昼ご飯を黙々と食べていた。いつもの光景に見えなくもないが、誰の目から見てもこの3人から漂う空気感が淀んでいるのが分かる。うん。あからさまに近づいちゃダメなやつだ。絶対に逃げた方がいい。なので蓮に目線で忠告しようとしたのだが……


「遥香〜♪一緒にご飯食べよう!」


遥姉と高橋先生が今日はベッタリとひっついてないのをチャンスと思ったのか、この馬鹿……蓮が遥姉に近寄ってそう声をかけた。この空気感で近寄ろうとは……蓮は勇者なのか馬鹿なのか……うん。確実に後者だろうな。


「…………」


遥姉の方はとりあえず蓮の存在を無視する方向でいってるみたいだが、あからさまに遥姉の不機嫌オーラが増しているのが長い付き合いから分かる。これは蓮が何か言い出す前に回収すべきだな。うん。


しかし、どうやら俺の判断は一足遅すぎたようだ……


「あれぇ〜?なんか2人空気が重いけどもしかして喧嘩した?」


この重たい空気感をようやく察したらしい。しかし、基本馬鹿な蓮はこれを機に高橋先生へ挑発するような発言し出した。馬鹿野郎!?本気で空気読めよ!?このお馬鹿!!?


「……あぁ?」


うわあぁ〜……遥姉が普段出さないようなドスの利いた低い声を出してるし……めっちゃ射殺すような目で蓮を睨んでるよ……


「佐藤君。ここは人目がないとは言え、騒ぎすぎてここが他の人にバレると問題になりますから静かにしてください」


が、ここで意外にも蓮の奴をそう言って注意してきたのは高橋先生だった。普段とは違う態度と声色に流石の蓮も「は……はい……」と言ってその場に黙って着席した。


「それと、先程の質問ですが、私は別に西園寺さんとは喧嘩していません。西園寺さんと喧嘩しているのは相沢さんで私は一切関わっていませんから」


高橋先生はそれだけ言うと再びご飯を食べ始めた。遥姉や桔梗姉は何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずにご飯を食べ始めた。


う〜ん……正直……関わりたくはない……だが、どうにかしないと蓮の奴が何かやらかしてこっちにまで着火しかねない……どうにかするしかないか……

俺は重たい溜息をついて、この状況の解決に乗り出す決意をしたのだった……正直帰りたい気分だけど……

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