更なる泥沼へ
side:西園寺 遥香
今朝、本当に些細すぎるぐらい些細な事で桔梗と喧嘩してしまいました。
本当に今時間が経って冷静になると自分でもどうかと思う程くだらない事で口論してしまったと反省しています。けど、どうしても桔梗相手だと自分の意見を押し通してしまうのです。いけないとは思っていても、昔からの癖みたいなものはなかなか治ってくれません。
このままではいけないと私も、恐らく桔梗も同じように感じていると思います。その証拠に本人は別に気にしてないようなフリをしていますが、チラチラとこちらを見てる気配を感じます。恐らく、謝ろうという意志はあっても、喧嘩した手前もあって、自分から謝罪は出来ないといった感じでしょうね。私も同じですし……
私だってこのままではマズイのは分かっています。なにより、今は先生と暮らしています。今朝相当先生には迷惑をかけてしまった自覚はあるので早くなんとかしなければという気持ちはあるのですが、これがなかなか……
結局、2人共仲直りをするきっかけを掴めぬまま、絶妙に距離感で離れながら、先生のマンション部屋の前にたどり着きました。
「先生。ただいま戻りました」
私がそう言って一声かけて扉を開けます。しばらく待って……誰も来ませんでした。先生……出かけたのかしら……?やっぱり今朝の空気感に耐えられなくて……ふと、そんな考えが私の頭をよぎりましたが
「おかえりなさい」
ゆっくりとした足取りでようやく先生が私達を出迎えに来てくれましたが……何故か先生の表情が……とても不機嫌そうでした。
「えっと……その……すぐに夕飯の支度をしますね……」
なんとなく先生の不機嫌オーラに耐えられず、先生に機嫌を直してもらおうと思ってそう言ったのですが
「いい。今日もうご飯食べてきたから」
「えっ……あっ……そ……そうですか……」
ここ最近私がご飯を作り、そのご飯が下手なお店より美味しいから外食に行けないなんて嬉しい褒め方をしてくれた先生が、まさかの外食してきた発言に私は思わず動揺してしまいました。
「ごめん。それから、明日は朝が早いからもう寝るから」
「えっ……あっ……はい……分かりました……」
先生のスケジュールはだいたい把握してるので、明日先生が早く出勤する必要がないのは知っています。だから、その言葉が嘘だと分かっているのですが、先生のあからさまな不機嫌なオーラに思わずそう返事を返してしまいました。
先生は私の返事を聞いてすぐに自分の寝室に戻ってしまいました。残された私は思わず口をポカンと開けて呆然としてしまいました。チラッと桔梗を見たら、あの何事にも無表情な桔梗も私と同じような反応をしていました。
「やはり今朝の事が原因でしょうか……お嬢様がいつまで自分の意見を曲げないから……」
ふと、桔梗から漏れたその一言に私はカチンときました。
「はぁ?それはあなたでしょう。あなたが普段冷静を装ってくせに、変に頑固だから……」
「その言葉……お嬢様にそっくりお返しします」
「だったら私は更に利子を3倍つけて返します」
今朝とほぼ変わらないような子供じみた言い合いが再び勃発してしまいましたが、もうこうなったら止めようという意志があっても止まる事が出来ません。
本当に些細な事で始まった喧嘩がだんだん泥沼化していくのをヒシヒシと感じました……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます