佐藤 蓮の想い

いずれ、佐藤君……いや、佐藤君に限らず西園寺さんを慕ってる全ての人に言われるんじゃないかと思っていた言葉……その言葉は私の想像以上に突き刺さり、重くのしかかる。


「私はハッキリ言える。私は遥香が好きだ。愛してる」


いつも西園寺さんを口説くように言ってる言葉だけど、その表情はすごく真剣で、恋愛経験が全くない私でも、これは本気なんだと分かった。


「いつからは分からない。もう一目見た瞬間に惚れていたんだ。その相手が同性だろうと関係なく。どうしようもなく遥香に惹かれていたんだ」


その表情が……その言葉が……彼女の想いが真剣なものなんだということが伝わっていく。同時に、私の胸がチクチクと痛むのを感じる。この痛みは私の罪悪感だろうか?


「けど…………先生。あんたはちっとも遥香を好きじゃないよね?」


佐藤君の言葉に、先程のチクチクとした痛みより鋭い激痛が私を襲う。別に持病とかないのに、異様に胸が苦しい……


「さっきの対応を見ていても……遥香と一緒になって反発する事もしなければ、女将さんの提案に嫌な顔一つしなかったよね?普通の恋人同士なら2人っきりを邪魔されて嫌がるのが普通だよね?」


確かにそうだ。普通の……付き合いたてのカップルならそれが普通の事なんだ……けど、私は……


「学校の昼食の時間の時だって、あんたは嫌な顔せずに僕達を招き入れる。ねぇ、もう一度聞くけど、あなたは本当に遥香の事が好きなの?」


佐藤君の2度目の問いかけ。


しかし、私にはそれに対する返答が出来ない。


私は西園寺さんが好きか嫌いかと言われれば好きと答えられる。


けど、それは佐藤君が問いかけている好きとは違うのだ。だから、私は佐藤君の問いかけに答えを出せない……


「答えられないみたいだね……まぁ、答えてもらわなくてももうハッキリしてるんだけどね」


佐藤君は溜息一つつき、西園寺さん達がいる所に戻ろうとする。そして、呆然と立っている私の横を通り過ぎる時に


「遥香への想いがないなら僕の想いの邪魔をするな」


と、ハッキリと私にそう言って、足早に西園寺さん達の所に戻って行った。


私は呆然と立ち尽くすしか出来なかった……

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