移動手段は……

さて、時間はあっという間に過ぎてゴールデンウィーク初日。私は何故か西園寺さんと一緒にマンションの駐車場にいた。


「あの……移動しなくて大丈夫なの?電車の時間とか……」


数分程時間が経っても待つように言われ、私が西園寺さんにそう尋ねたら西園寺さんは


「大丈夫です。もうすぐ来ますから」


と、笑顔でそう言われてしまった。まぁ、西園寺さんがそう言うならと思い、しばらく待っていると……一台の車が私達近くに駐車スペースに駐車した。確か……私は車に詳しくはないけど、CMで何回も見た事のある車じゃなかったかな?

そして、運転席のドアが開き、中から1人の執事服を着た男性が姿を現した。男性は私達にすぐに恭しく頭を下げて


「遥香お嬢様。奥様。お待たせして申し訳ありません」


と言ってきた。やっぱりと言うか……どうやら男性は西園寺家の執事さんみたいね。そして、私はやっぱりこの人からも奥様認定されてるのね……


「いいえ。時間通りです。流石ですね。あっ、先生。こちらは、相沢 春馬はるまさんです。西園寺家に仕える執事で、桔梗の父親でもあります」


「奥様。いつも娘がお世話になっております」


「いえいえ!?そんな!?むしろ私の方が娘さんに助けられてばっかりで……!!?」


相沢さんのお父さんが私に再び頭を下げてきたので、私は慌ててそう言って頭を上げてくれるように促した。

それにしても、相沢さんのお父さんだったのか……言われてみたら納得な部分が多々ある。ちょっとクールな感じの言い方とかそっくりだし。けど、相沢さんのお父さんが、この車に乗ってきたって事は、この車で向かうという事かな?


「では、春馬さん。後は大丈夫なのでもう戻っても大丈夫ですよ」


「はい。では、失礼します。遥香お嬢様。奥様」


相沢さんのお父さんは私達に一礼して、すぐにこの場を去って行った。って!?ちょっと待って!!?


「えっ!?この車で◯◯県の温泉宿に向かうんじゃないの!!?」


「えぇ、その通りですよ」


西園寺さんはニッコリと微笑んでそう言った。


「えっ……だったら……その……相沢さんのお父さんがいなかったら……誰がこの車を運転するの……?」


私は一応車の免許証はある。身分証として使えるからとか、就職に必要になりそうだからという理由で一応はとっておいた。しかし、実は取得してから一度も運転した事がない。だから、こんないかにも新車の車を運転して遠出する自信なんてどこにもない。


「ご安心ください。車の運転は私がしますから」


「はい!!?」


とんでもない発言をする西園寺さんが私に見せてきたのはなんと、この国でちゃんと発行されている運転免許証だった。しかも、私のようなAT限定のじゃなく、MT車も運転出来るやつだ……


「いや……でも……一体どうやって……?」


「一応17歳から自動車学校には通えますからね。まぁ、仮免は18歳からになってますがね。まぁ、1早く免許証が欲しかったので、18歳になってから短期集中コースでバッチリ取得しました」


いや……短期集中コースでも短期過ぎるんじゃ……って言うか、普通に学校にも通いながらどうやって自動車学校にも通っていたというんだろう……あまりにも謎過ぎるけど、西園寺さんが見せてくれた運転免許は紛れもなく本物である。


「という訳で、先生♡私に身を預けて任せてくださいね♡」


西園寺さんは車に初心者マークを付けた後、私の方を振り向いてニッコリと笑った。うん……なんだろう……若干の不安を感じるのに西園寺さんなら大丈夫と思ってしまうのは……


とりあえず、若干は不安に感じながらも、私は助手席に座って、西園寺さんが運転する車で◯◯◯県の温泉宿に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る