この関係の終わりの時……
私は最早藤村君の存在を完全に忘れ、「果たし状」を送りつけてきた男子生徒の方に目がいってしまっていた。先程のパシャっという音は十中八九間違いなく、今握られているスマホで写真を撮ったのだろう。
そして、そんな私の考えを察した彼はニヤリと笑うと、スマホをサッと操作して、私にスマホに映った画面を見せつけた。それは、絶妙に男子生徒の顔は隠れているものの、私が藤村君に手を出されている写真だった。その写真を見せつけられて私の心は酷く動揺していた。
「いけませんよねぇ〜。コレは。例え先生からじゃないにしても、先生から生徒を誘惑したって思われますよね〜。一般的には」
確かに彼の言う通りだ。いくら私が違うと叫んでも、この場には私と彼と藤村君しかいない。普通、藤村君が正直に自分からやったと言わないだろうし、彼はどう考えたって私に有利な証言をしてくれるとは思えない。
「それに……ほら……先生が彼を誘惑していた証拠写真もたくさんありますよ」
彼がニッコリ笑ってスマホから次々と、私と藤村君が学食で相席して食べている写真を見せる。その写真も絶妙な角度で撮られて男子生徒の顔は見えていないが、私が藤村君と食べている写真はバッチリ映っていた。
この光景は、私の対応の仕方等から皆からあり得ない話と流されたが、先程の襲われた写真を見せられたら、私が誘惑したという事実に繋がるものとして認識されてしまうだろう。
「……目的は……西園寺さん……?」
「ふふふ……察しがいいね。先生。でも、もう来てもらってるんだよね」
ニッコリ笑ってそう言う彼に私は驚いて目を見開く。彼がニコニコ笑いながら横に避けると、私の目の前に西園寺さんが無表情で立っていた。
「遥香!だから言っただろう!これがこの人の本性さ!これがその証拠さ!」
彼はそう言って西園寺さんに先程の写真を見せる。西園寺さんはチラッとその写真を確認し、ツカツカと私の近くに歩み寄る。
そして……西園寺さんは思いっきり手を振り上げた。
あぁ……そうか……この関係もついに終わってしまうのね……
何故だろう……望んでいたはずの事なのに……胸が痛くなるのは……
皆から祝福された時、罪悪感で胸が苦しくなった時よりも胸が苦しくなっているのは……
何故……私の頰に一筋の涙が溢れているのだろう……
バシンッ!!!!
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