12年前に行われた緊急西園寺家会議

side:西園寺 遥香


6歳で先生に一目惚れした私は早速行動に移した。まずは、家族からの協力を取りつける必要がある。その為には家族を説得する必要があると思い、私は家族が全員揃っている食卓で打ち明ける事にした。好都合にも、本日はお兄様方の彼女さん達もいるし、お兄様方を止めてくださるだろう。まぁ、問題はお父様もなんだけど……


「お食事中ですが私、皆に伝えたい事があります」


「ん?何だい?遥香。急に改まって……」


私の言葉に真っ先にお父様が反応してくださいました。お兄様方やお母様も私の話を聞く態勢になる。この後、皆がどのような反応をするか分かっていながらも、私は言わずにはいられなかった。


「私、好きな人が出来ました」


私の一言に、食卓が凍りつくのを感じました。秋穂さんと夏流さん(当時はそのように呼んでおりましたので)はすぐに「やばい!?」と言いたげな表情をしておりました。


「そこはどこの馬の骨のクズ虫だい?」


お父様がニコニコ笑っておりますが目が全く笑っておりませんでした。お兄様方やお母様も同様に。しかし、困りました……私はあの方の名前を知りません……とりあえず、説明するしかありませんね。


「実は……一目惚れというやつで、お相手の名前を知りませんが、以前行われた翔太お兄様の卒業パーティーに来ていまして……」


「翔太。すぐにお前が呼んだ者達のリストアップをしなさい」


「アイアイサー!!」


お父様が翔太お兄様にそう命じて、翔太お兄様は急いで物凄い勢いで呼んだ人達のリストを作成されました。


「地味な感じのメガネをかけた……」


「メガネをかけた奴はこいつとこいつとこいつだな!」


「この中のどこかにオレ達の大事な大事な妹を誑かした奴が……!!」


翔太お兄様の指をさす人物を見て黒いオーラを放つ翔一お兄様。


「それで……何故かブカブカの服を着た女性ですわ」


『へっ?女性???』


私が一目惚れしたのが女性と聞いて皆様の目がキョトンとなりました。


「えっ……えっと……遥香が一目惚れしたのって……女性なのか……?」


「はい。あっ!後、翔太お兄様は秋穂さんの次ぐらいにその方と喋っておられましたよ!」


「えっ?翔太君が私の次ぐらいによく話す女性って……それってもしかして……真由美ちゃん?」


秋穂さんが首を横に傾げてそう言いました。夏流さんはメガネをクイっと上げて


「全ての特徴が真由美に当てはまるからほぼ間違いないでしょうね」


「翔太。卒アルがあったろ。その卒アルを遥香に見せてやってくれ」


「おう!」


翔太お兄様は急いで卒業アルバムを取りに行き、戻ってきた翔太お兄様は卒業アルバムに載っている生徒の写真を私に見せてくださいました。


「遥香が惚れた相手ってこいつか?」


翔太お兄様の指さした写真には、間違いなく私が惚れた方……「高橋たかはし 真由美まゆみ」さんの名前が載っていました。私はようやく愛しの方の名前をこの時初めて知ることが出来ました。


「はい!間違いありません!この方で間違いありませんわ!」


私は翔太お兄様から卒業アルバムを取り上げて、他にその方が載っている写真がないか探します。その間、お兄様方とお父様達とで話し合いが始まりました。


「ふむ。翔太。その方はどういった方なんだ?」


「えっと、まぁ、一言で言うなら真面目人間かな。妙に達観してて夢を見ないタイプだから、他の女性陣みたく俺に言い寄ったりしてこないから、付き合いやすかったって言うか……それに、秋穂と付き合う時も何かとアドバイスくれたりもしたし……秋穂とは親友だったからな」


「それは俺も同じくだな。夏流共仲が良かったらしく、その関係から俺も夏流に関するアドバイスをもらう為に話しかけさせてもらったよ」


お兄様方の言葉に、秋穂さんと夏流さんは若干恥ずかしそうな顔をして俯きました。お父様は今度はその秋穂さんと夏流さんに伺いました。


「秋穂さんと夏流さんはその方とは親しかったみたいだが?」


「はい。なんというか……その……私以上に地味を貫いているというか……とりあえず性格はどこまでも真面目な娘です」


「そうですね。秋穂さんの言う通り、真由美を一言で表すなら真面目。それ以外の言葉が浮かびません」


2人からの言葉を受け、お父様はしばらく考える仕草をした後、私の肩をガッと掴んで


「遥香。わたしは遥香の初恋を応援するよ」


「まぁ!本当ですか!?お父様!!」


『ちょっ!?親父!!?』


お父様の発言に、同時に声を揃えて驚愕の表情を浮かべるお兄様方。しかし、お父様は酷く真面目な顔でお兄様方の方を振り向く。


「何だ?反対する理由がどこにある?どこの馬の骨とも知らないクソ男共にうちの可愛い可愛い遥香をやるより、お前達が信頼をよせているその女性に嫁に来ていただいた方がマシというやつだろ」


「それは……」


「確かに……」


お父様の言葉にお兄様方はアッサリと納得されました。お母様もニコニコ笑って頷いてます。どうやら、お母様も賛成してくださったようです。


「よし!では!緊急西園寺家会議を開くぞ!どうやってその女性を我が家に招き入れるか緊急会議だ!」


『おぉ〜!!!!』


お父様の一声で、私達西園寺家による緊急の高橋 真由美さんをどうやって私の嫁にするかの計画・会議が夜通し行われました。



「ごめん……真由美ちゃん……」


「これはもう私達では止められないわ……」


秋穂さんは苦笑を浮かべ、夏流さんは軽く溜息をついてそう呟かれました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る