29歳独身で「行き遅れのババァ」と言われた女教師の私が、結婚する事になりました。教え子の女子高生と……

風間 シンヤ

29歳独身の私は「行き遅れババァ」と呼ばれています

私、高橋たかはし 真由美まゆみ私立藍那高等学校しりつあいなこうとうがっこうに勤務している女教師である。この日、私は自分が受け持っているクラスの3年A組で、自分の担当教科である社会科の授業を行っていた。


「それでは……この問題を……」


私はある程度話をしたところで、問題を出して生徒に答えてもらう為、その生徒を指名しようと名簿をチラ見し、思わず顔をしかめてしまう。

私はこういう時のセオリー通り、指名は出席番号順で指名していた。そして、今日の指名される人物は、私がちょっと苦手に思う生徒だった。まぁ、だからと言って指名をしない訳にはいかないので、私はすぐに表情を戻してその生徒を指名する。


「田中君。答えてくれる?」


「げっ!?今日俺の番かよ!?」


指名されたのは、クラスで1番のお調子者の田中君。私は、この子のような性格をした相手をするのが苦手だけど、教師をやっている以上避けられない。


「すんません……分かりません!!」


案の定、彼は戯けたようにそう答える。彼のそんな答えに、クラスの皆が笑い出す。私は何が面白いんだろうと思いながらも、軽く溜息をついて彼に注意する。


「田中君。もっと真面目に勉強しなくては駄目よ。ここはテストにも出る範囲だし、あなたも受験生なのだから」


私はそう注意をしたのだが、彼はすごく不満そうな顔で


「ったく、行き遅れのババァはいちいち小言がうるさくてかなわねぇなぁ……」


彼は私に対してそう発言する。すると、またクラスから笑いが漏れ始める。私は、そんなクラスの反応に最早怒りの感情すら湧いてこなかった……



私は先程も話した通り現在29歳。いや、より正確に言うなら私の誕生日はどういう訳か、いつのまにかカップルが集う日となったクリスマスの12月25日なのである。つまり、クリスマスが来たら私も立派な30歳なのである。

そして、そんな私は未だに独身の未婚。この学校の女性教諭が皆、既婚者である中で、唯一の売れ残りがこの私なのである。いや、一応新任の女性教員もいるのだが、その人も結婚秒読みの噂があるので、本当に独身未婚は私だけだろう。

その為なのか、生徒の間で私は「行き遅れのババァ」などと呼ばれている。まだギリギリ20代なのにババァはないだろうと言いたくもあるが、やはり、30歳迫ってきたら、あちこちの老化が見受けられるのを見ると、若い子達から見たらババァと呼ばれても仕方ないのかなと最早諦めの境地である。一応、心の中でいずれあなた達も同じようになるわよと思いながらも……


なので、こうやって私に対して馬鹿にする言葉に最早腹が立つ事はないが、このままでは授業が進められないので注意をしようとするよりも先に……



「皆さん。静かにしてください」



凛とした女生徒の一声で、笑いで湧いたクラスがシンと静まりかえった。

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