第三章 華宮洋子の物語 舞踊競技

秋のスポーツ交流戦


 スリーシスターズの秋のスポーツ交流戦、春の武道交流戦に惨敗した華族女学校は雪辱を誓っていた。


 インペリアル・シスターの華宮洋子は、勝つために六条晶子を誘って、オディールのインペリアル・シスターと会合を持つことに。


 意気投合した三名は自らの私欲も手伝って、いろいろと良からぬ方向へイベントを計画……


     * * * * *


 公爵令嬢華宮洋子は、華族女学校のインペリアル・シスター、一号生徒とも呼ばれ生徒総代、生徒会会長でもあります。


 本来インペリアル・シスターは最上級生がなるものですが,六回生でなっているのです。

 誰もが認める、才色兼備の華宮洋子に対して、異論は出なかったのです。


 おまけに華宮公爵家というのは、臣籍降下した家で、当主の華宮公爵は内親王様を妻としている。

 つまり華宮洋子は陛下の外孫にあたるのです。


 オディール女学館の吉川美子とは、いわゆる『S』の仲なのは公然の秘密、しかも学校も公爵家も黙認、それどころか歓迎しているように思われます。


 卒業後は吉川美子の我妹子(わぎもこ)になる、そう誰もが思っています。

 これはスリーシスターズの中でも、誰も口には出しませんが、知らないものはありません。


 実際、吉川美子は、華宮洋子の我妹子(わぎもこ)証文を受け取っています。

 五月の連休に、京都で肌を合わす関係になり、『やんごとなき方』より、お祝いの品を送られているのです。


 十月初旬、ロシアのサンクトペテルブルグでの反乱が収束した頃、帝都にも秋が深まり始め、華族女学校はスリーシスターズスポーツ交流戦の話で持ちきりです。


 春の交流戦で、オディール女学館にコテンパンに負けた華族女学校の生徒たちは、なんとしても秋の交流戦で雪辱したいと思っているのです。


 しかも今回の会場は、持ち回りの関係で、華族女学校になっているのでなおさらです。


 生徒会としても、女生徒の気持ちを汲んで、勝つための対策会議を開くことになりました。


「華宮様、秋の交流戦の種目は決まりましたか?」

「明後日の三校のインペリアル・シスターの会合で、発表されることになっているけど、オディールのインペリアル・シスター、出てこれるかしら……」


 秋の交流戦の種目は、春の交流戦の勝者のインペリアル・シスターが決める慣わしなのですが、オディールのインペリアル・シスターは入院中なのです。


 一度決まったインペリアル・シスターは、退学か死亡でもない限りかえられません。


「明日でも、お見舞いがてら話をしてくるわ」

 その夜、華宮洋子は東京ハウスに泊まり、都女子学園のインペリアル・シスター六条晶子を誘ったのです。


 オディールのインペリアル・シスター、朝倉麻子は聖路加国際病院に静養がてら入院中、ひどい生理不順で臥せっているのです。


 小さいながらも、朝倉という財閥一族のお嬢様、小さい顔、大きな眼、真っ白なお肌で、腰まである黒髪、それこそ絵に描いたような深窓のご令嬢。

 オディールのインペリアル・シスターですから、賢い上に優しいときています。


 ただ欠点は病弱、色弱もあり色彩補正サングラスが欠かせません。

 そのためか、昨日婚約破棄となり、ますます枕があがらなくなったのです。

 このことは、まだ関係者以外だれもしりません。


 朝倉財閥は大戦後、朝鮮半島の全資産を放棄させられた見返りに、樺太開発を請け負い、北樺太のオハ油田と、家業である合成化学事業に命運をかけ、事実、繁栄していたのですが、先ごろナーキッドの格安電力による石油価格の暴落により、危機的状況に陥っていたのです。


 その起死回生の為に、上位財閥との統合を画策し、その御曹司と、朝倉麻子の婚姻成立となったのです。

 それが破綻し、対策に苦慮しているのです。

 原因は麻子の遺伝疾患とのことです。


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