奇遇
顔見知りの警部さんが、
「元帥閣下、この者たちが、何かしましたか?」
「いえね、私を身請けしてやるといわれたので、全財産くれるのといっただけ」
「お店に迷惑だから、外でお話しましょうといったら、躾けてやるって、おっしゃるの」
「貴様!」
憲兵さんが声を荒げます。
全員すぐに連行されていきました、どうやら特高が担当のようですね。
美子さん、顔見知りの警部さんに、
「私、名前のとおり巫女気質がありまして、この間、神の啓示を受けたのです」
「それによると、規模は小さいけど、メキシコの『神の鉄槌事件』のようなことが、起こるそうです」
真っ青になった警部さんです。
どうやら詳細を知っているようで、ナーキッドがかんでいると、推測もしているようです。
「確か不法滞在の暴力組織、いないものがいなくなる、帝国にとって関係ないことでしょう?」
なにを思ったのか美子さん、独り言を言っています。
「あの者は、こちらで拘束させていただきます」
「どうぞ、なんの力も無い小娘としては、怖い男に『因縁』をつけられ、困っていたところです」
「警察のかたがたに、助けていただいたのですから、お任せしますわ」
「でもあの方、近々破産して無一文、首など括るかもしれませんよ、布団一枚といえど、残らないでしょうね」
目を細めて、ニコッと笑った美子さんでした。
後日、この警部は、華宮公爵にこのときの出来事を、こう表現したそうです。
背筋が凍る思いがした、冷酷が美を纏って立っていた……と。
この騒動は五分ぐらいでした。
美子さん、何事も無いようにお店に戻りますと、千代子さんと晶子さんが、心配そうに座っていました。
「なにも無かったですよ、外に出ると、男の人が取り巻きましたけど、すぐに特高さんと憲兵さんに、拘束されて連れて行かれました」
「まぁこう見えても、私は帝国陸軍元帥でもありますからね、順五郎さんが、配慮して下さったのでしょう」
翌日、荒井の配下にある暴力組織構成員は、全ていなくなりました、翌々日には京紫合名会社は倒産、無限責任なので、惨いことになりました。
荒井は山手線に投身自殺、例の爺も、一週間後に首をつりました。
荒井の弟、爺の孫も合名会社の社員、荒井の内縁の妻は後追い自殺。
その連れ子は、荒井の弟に因果を含まされて、身売りを決意、爺の娘も息子のために、妹である娘を身売りさせたのです。
二人とも身売り先は、京都宮川遊郭六条楼、奇遇といえば奇遇、因縁めいた話となりました。
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