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「──取り返しのつかないことをしてくれたな。デニス、おまえ達のしたことは、もはや庇いようがない」
デニス王子達が押し込められた部屋にて、国王が罪人達に重々しく告げた。その周りには、険しい顔で王妃とモスカート公爵、そしてその妻が佇んでいる。
「なっ、なぜですか!? メリッサはキャロルを虐めたのです! あれは当然の制裁で……!」
「マヌエル公爵夫人の身分なら、平民一人虐げようともなんの問題もないが? そもそも彼女にはそこの平民を虐める理由など一つもない」
「そ、そんなひどい! そんなのって差別よ!」
国王の言葉に、いかにも傷つきましたというように、キャロルが泣き真似をした。
それを慌ててデニス王子とその取り巻き達が慰める。その様子を周囲の者が冷ややかに見やった。
「身分制度とはそういうものだ。……しかし、それを無視してそこの平民は公爵夫人を侮辱したな。むしろ、虐げたのはそこの平民だと思うが」
「なっ、なんでそうなるのよ! あたしを虐めたのはメリッサよ! 馬鹿なの!?」
──不敬も不敬。
国王相手に無礼な口をきくキャロルにさすがの取り巻き達も青ざめる。
「素行不良のデニスを監視する一環で、親しくしているそこの平民の所行も既に明らかになっておる。自作自演で公爵夫人の罪を捏造し、デニス達にあのような場で糾弾させるなど、許されることではない」
「そっ、そんな! 確かにあたしはメリッサに虐められて!」
「そ、そうです! メリッサはわたしの寵愛を受けるキャロルに嫉妬して彼女を虐めたんです! このような暴挙こそ、とても許されることではありません!」
「──我が息子ながら、呆れますわね」
大きな溜息をついて、王妃が冷ややかに呟いた。
「母上はあの女狐に騙されているのです! どうか目を醒まされてください!」
「目を醒ますのはあなたの方ですよ。そもそも彼女は公爵と結婚していますし、幼い頃から彼と想い合っているのは有名な話です。なぜあなたがそのような馬鹿げた妄想をしているのか不思議でなりませんわ」
「な……っ」
「うむ、嫉妬どころか、マヌエル公爵夫人はおまえを嫌っているしな。婚約者がいるのに、なぜか執拗に体の関係を強要されてぞっとしたと申しておったわ」
「なっ、なっ、無礼な!」
国王夫妻に現実を突きつけられて、屈辱からかデニス王子が顔を真っ赤にする。
「無礼なのはおまえの方だ。おまえは地位こそ王子だが、王位継承権はない。しかし、公爵夫人は王位継承権第四位。おまえは自分より身分が上の者を公の場で侮辱し、危害を加えたのだぞ」
「なっ、馬鹿な! なぜメリッサなどに継承権があってわたしにはないのです!」
知らなかったらしい事実に、驚愕を隠せずにデニス王子が叫んだ。キャロルや取り巻き達も息を呑んでいる。
「──まさかとは思いますが、デニス王子は三公家から王が選出されることを知らないのでは? 普通では考えられないことですが」
それまで事の成り行きを見守っていたモスカート公爵が口を挟む。それに対して、国王が目を瞠った。
「いや、まさか王子ともあろうものが……いや、しかし……」
「父上、その三公家とはなんなのです? 王が選出とはいったい……次代の国王は王子たるわたしのはずです!」
自分の息子がそこまで愚かだったとは思いたくない国王がぶつぶつと呟くと、彼のその苦悩をぶち壊す形でデニス王子が叫んだ。
「……まさかここまでとは、呆れてものも言えぬわ。そもそも、王族としてふさわしい振る舞いの出来ぬおまえが、王位継承権から外れたことは文書でも伝えてある。おまえはそれに目を通さなかったのか?」
「えっ!? いや、それは……っ」
「……見ていなかったのだな。父と思って、国王の書状を軽んじたか」
うろたえるデニス王子を
「──今日この時をもって、第一王子デニス・ハイランダーを王族籍から抹消する。おまえはそこの無礼な娘と同じ身分といたすから、存分に仲良くすると良い。……できるのならばな」
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