第16話 宮上想史

ノバはつかつかと歩いている。

アンはただ後をついてこいと言われてその通りにするしかなかった。

「いったいここはどこなんですか」

「ここかい、ここはそうだね……特に決まった名前はないけど、あたしは封印都市とよんでいるよ」

アンはそんな場所聞いたこともなかった。

「そんな名前始めてききました」

「そりゃそうさ、地図にない都市なんだから、そもそも都市じゃないしね」

からからとノバは笑った。

塔の外にでると、子供たちがいた。

「ノバさまあ」

「ノバさまあ」

十数人の子供たちに囲まれるノバ。

「よーし、みんな良い子にしているかなあ」

「はい!」

「いい子!」

「よしよし、ちょっと用事があるからまた後でね」

「えー、」

ニコニコと笑いながらノバは歩きだした。

街には人がいて、皆がやがやとしているが、ノバが通ると挨拶をしてくる。

黄色い屋根の家々、赤い屋根の家、レンガ造りの家があって、露店がそこいらにあり、広場の公園をぬける。

アンはノバについて行きながら、街に住む人々をみていて違和感を抱いていた。


まず、アンのことを一切見てこなかった。誰一人として。

そこにアンがいないかのように。

アンがよそ見をして、人にぶつかってごめんなさいと謝っても、なにも反応しないのである。

なにかがおかしい。

おばさんたちの会話に耳をかたむける。

「今日は良い天気だねえ」

「そうだねえ」

「洗濯日和だよ」

「買い物にもいかなとねえ」

「今日は良い天気だねえ」

「そうだねえ」

「洗濯日和だよ」

「買い物にもいかないとねえ」

「今日は……」

アンは愕然とした。

同じ会話を繰り返しているのだ。

まるで痴呆の老人が同じ話を繰り返しているみたいに。

「あの……なんなんですかここの人達……」

アンはノバに恐る恐る訊ねる。

ノバは立ち止まって、振り向きアンを見た。

「死んでるのさ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る