第50話 母と娘

「日常モノにドラマはあっても、格闘はない。格闘がなければゲームにならない。ただしゲームになってもリズムゲームか単純ゲー。」

 娘の真理亜の名言である。

「可哀そうに独り言を言って。若いのにボケたの? 真理亜。」

「なんでボケるのよ!? お母さんの半分もまだ生きてないのよ!」

「年齢やシミ、シワで母親にケンカを売るとはいい度胸ね!」

「若さだけはお母さんには負けませんから! 若さは無限の可能性だ!」

 母のひばりと娘の亀裂は決定的なモノになる。

「あ、ご主人さんの靴が汚れている。靴を磨いてSNSに投稿して、いいねをたくさんもらうんだ。アハッ!」

 いいね少女のエリアは靴を磨き始めた。

「くらえ! お母さん! いけ! ティッシュ箱!」

 角の尖ったティッシュ箱が娘のサイコキネシスで母親目掛けて飛んでいく。

「フッ。」

 微動だに動かない母親の表情には余裕があった。

「なに!?」

 ティッシュ箱が母親の目の前で止まる。

「動け!? 動け!? ティッシュ箱!?」

 もがく姉。

「オッホッホー! 無駄よ。私の周囲には見えないサイキック・バリアが張り巡らせているのよ。私に攻撃は効かないわよ。」

「タイキック・バリア!?」

「サイキック・バリアよ! 真理亜! 少しズレてるわよ!」

「アハッ!」

 お約束の展開。

「なんだか面白そうな手品合戦だな。そうだ! これを撮影してライブ放送でSNSに投稿すれば「いいね」が億単位で手に入るんじゃないかな? そうすれば私は億万長者だ! SNS・ドリームだ! アハッ!」

 いいね少女は本人の同意も無く、母と娘のサイキック対決をスマホでライブ配信を始めた。

「くらえ! トイレットペーパー乱れ打ち!」

 娘のサイコキネシスでトイレットペーパーが空を飛ぶ。

「小癪な! 小娘! サイキック・水芸!」

 どこからか大量の水が現れて、トイレットペーパーを迎撃する。

「おおー! いいねが無限に集まってくる!? 私に「いいね」が集まって来る!? ワッハッハー!」

 いいね少女は少し「いいね」に呪われていて精神が崩壊している。

 つづく。

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