第7話 予知
「タイキックって、星戦争のフォースのように光る剣が出てきて、仮面を着けた悪者と戦ったり、竜玉の気のように集中してアルファ破のようなエネルギーの集合体を打ち込んだり、戦士機動みたいにニュータイプ能力で巨大ロボットを操ったり、そっちの方向の物語になると思っていたんだけど?」
姉の真理亜は当初の予想を呟く。意外に日常モノで収まっていることに疑問を感じていた。
「アメリカン・ヒーローは最後の手段よ。平和な日本では日常モノで売れるんだから。何も悪者と戦うだけがサイキックじゃないわよ。」
妹の楓はマーケティング能力も高かった。
「そうね。日本では登場キャラクターのデザインが可愛ければ、熱狂的なファンがついてくれるんだから。良かった~、私、可愛くて。アハッ!」
無駄美人に対抗して、姉は無駄に可愛かった。
「それにサイキック・ソードや、サイキック・アルファ破に、サイキック・巨大ロボットを登場させちゃうとCGで費用が掛かるのよ。」
「予算の問題ね。だから大人って嫌いよ。」
歪んだ大人が嫌いなので、どこまでも姉は純粋に突き進んで行く。
「お姉ちゃん! それは予知よ!」
「予知!?」
知らない間に姉はサイキック・スキルの(予知)を使っていたのだった。
「予知は少しだけ未来が見えるのよ。サイキック・スキルの能力の一つよ。」
「未来が見える!? スゴイ!? タイキック!?」
「お姉ちゃん!? 少しズレてるよ!?」
未来が予知できても、姉はサイキックとタイキックの違いは見えなかった。
「それでも今後の展開が見えてきたわね。」
「今後の展開!?」
「そうよ。これからお姉ちゃんが進む道よ!」
「私の進む道!?」
妹も予知能力があると、たじろぐ姉。
「きっと、これから私たち以外の超能力少女が現れて、戦って、助け合って、仲間になって、友情と絆を深めていくんだわ。そして、最後には世界を救うのよ。」
「おお! 私が世界を救うぞ!」
単純な姉は注意喚起に影響されやすい。
「そして家族のくせに登場していない兄の一郎は、超能力者の特殊機関にいるのよ。だからごはんの時間にも家に帰ってこないのよ。」
「ごはんより仕事が大切なのか!?」
「ツッコムのは、そこじゃないと思うけど。」
食いしん坊な姉は、サイキック特殊機関より、ごはんが大切であった。
「でも当分の間は家族での行動や、お姉ちゃんの心に聞こえてきた人の声に対応するしかないわ。」
超能力者の悲しい定めで、聞きたくもない声が勝手に聞こえてくることがある。良い子とも悪いことも。それが超能力者の宿命だとしても。
「どうして?」
しかし姉は、そんなことには気づいていない。
「今、今後の構想を練っているから。」
話をはぐらかす妹。
「ズコー!?」
ズッコケる姉。
「アハハハッ!」
仲良し姉妹であった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。