勇者の旅立ち:有賀 武文 あるが たけふみ

男性

34歳

臨床検査技師 

適応力:139


 女神からの声が頭に響く――


「同じ対象に連続で憑依できればいいんだけど、一旦意識がはっきりするとそれはできないのよね。


 あなたは横の兵士の加勢をしてあげて。


 流れとしては、『民である自分も勇者を望んでる』ってところ。


 わかんなくなったら、ノリでよろしく~」


憑依先:兵士


■■■テンセイ■GO■!■■■■■


「どうした? そこで黙るのか!」


 進言の途中で不意に黙り込んだ兵士を、王が怒鳴りつけていた。


 武文はその兵士の横に立っている。

 自分も同じ装備をした兵士のひとりだということに、すぐに気づく。


(……? 夢か。しかし、あの女神の声……)


 怒鳴られた兵士のほうは、ひたすら狼狽している。

「え、え、俺……何かやらかした?」


(これを助けろって言われたのか? よくわからんがひとまず――)


「民である自分も勇者を望んでます!」


 叫んでみた。

 言われたとおりの台詞である。


 王は、「ほう?」と武文をぎろりと見る。

「貴様もわたしに意見を申すと言うのか」


(うわ怖っ。なんだこれ所長の何倍も怖い。早く覚めろ、夢!)


「た、民である自分も勇者を望んでます!」


 それしか言えない武文だった。


(だって話の流れ全然知らないんだってば……)


■■■オツカレ■サマ■デシタ■■■


 ――憑依者が元の世界へと戻り、そして神界。


「あ、今度は説明少なすぎ?


 そうね~。なんだか加減が難しいわ」

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