第101話 王子vs宰相の息子

「それでは準備はいいですか?」


木刀を構えて立つセリュー様とマクベス。その中間でいつでも止めれるように審判をする俺は二人の様子を見てから開始の合図をする。


「それでは……はじめ!」


その言葉で真っ先に動いたのはマクベス。先手を取って確実に勝利したという微笑みを浮かべて真っ直ぐに喉元を狙ってきた。突き技で怯ませて終わらせる作戦なのだろうが、セリュー様はそれを完璧に見切ってギリギリで避けて横から一閃する。


「ぐっ……」


なんとかそれを回避したマクベスに対してセリュー様はあえて追撃をせずに構えを直した。わざとマクベスに余裕を見せて、実力差を教えてあげたのだろう。セリュー様の行動にマクベスは少しだけ目を細めてから一気に間合いを詰めて下段からの一太刀を浴びせようとする。


その一撃をセリュー様は完璧に見切ってから、あっさりと避けて木刀を持つ手を狙う。セリュー様の一撃に木刀を落としたマクベスを見てセリュー様は木刀をマクベスの喉元に突きつけて言った。


「えっと、とりあえず僕の一勝です」

「……のようですね」

「一応、聞きますがまだやりますか?」

「ええ、負けっぱなしは癪なのでせめて一勝します」

「だそうです、フォール公爵。すみませんが……」


その言葉に俺は頷いて言った。


「気のすむまでやって諦めたらいい。賭けはセリュー様の勝ちですから、ここからは好きにやって構いませんよ」

「ありがとうございます、フォール公爵」

「と、いうか最初の突きで完全に勝ったと思ったんですがね」

「ああ、確かに素晴らしい突きでしたが、フォール公爵の速度に慣れるとなんてことありませんよ?」


その言葉にマクベスは呆れたようにこちらに視線を向けてきた。


「本当にとんでもない人なんだな。『鬼神』って呼ばれるのも納得できる」

「そんな呼び方、どうせセレナ様から教わったんですね」

「昔騎士団にいたんですよね?流石はフォール公爵です。貴族でありながら剣術の腕も最強クラスなんて憧れます!」


そんなキラキラした瞳を俺に向けてくるセリュー様にマクベスは苦笑して言った。


「ま、なんとなく殿下が憧れる気持ちは理解できましたよ」

「そうでしょう!フォール公爵はとても素晴らしいお方なんです!」

「そ、そうですね。殿下ほど心酔する気持ちはわかりませんが」


ちょっとひいてるマクベス。うん、その気持ちはわからなくない。なんだってこんなに子犬のようになついてくるのか全く理解に苦しむからね。それで情が移るかどうかはわからないけど確かに前よりセリュー様のことを受け入れている自分がいるのは確かだ。まあ、それでも、サーシャとローリエへの感情に支障はないけどね。








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