閑話 少女と少年の憧れ
「わぁ……!」
一面に咲く花に思わずそう言葉に出るローリエ。そんなローリエを見てくすりと笑いながらセレナは言った。
「どう?この辺りは特に今が時期だから綺麗でしょ?」
「はい!せれなさま、ありがとうございます!」
「喜んでもらえて良かったわ」
そこでセレナはもう一人がそわそわしているのを見てため息混じりに言った。
「セリュー、気持ちはわかるけど、ローリエさんを一緒に案内なさい」
「ね、姉さん。でも……」
「まったく……憧れのフォール公爵に会えたからってはしゃぎすぎよ」
セレナはセリューがカリスによってどれだけ精神的に助けられたか知っているので気持ちはわからなくないが、それでも姉としてきちんと注意する。
「お父様とフォール公爵は今大切な話をしているの。だから今は私と一緒にローリエさんを案内しましょう」
「うん……すみません、ローリエ嬢」
「だいじょうぶです!」
にぱっと明るく笑うローリエ。カリスが見ていたら抱きつきそうな笑みに実際にセレナは抱きついて撫でながら言った。
「やっぱり可愛いわ!ローリエさん可愛い!」
「姉さん。ローリエ嬢が困ってるから」
そう言って驚くローリエから姉を引き剥がす。それからセリューはローリエを見て言った。
「ローリエ嬢のお父上は素晴らしいですよね」
「はい!おとうさまはせかいいちかっこいいです!」
迷いなくそう答えるローリエ。そんなローリエにセリューも深く頷いて言った。
「フォール公爵はすごく格好いいですよね。優しくて頭がよくて、その上お父様に聞きましたが剣術もお強いとか?」
「ええ、前に私も見たけど多分騎士団長より強いかもしれないわね」
「おとうさまはすごくつよいです!」
えへんと、胸をはるローリエ。そんなローリエにまた抱きつきそうな姉を抑えつつセリューは言った。
「僕はフォール公爵に救われました。フォール公爵は正妃の子供なのに側妃の子供の兄さんより不出来な僕のことをちゃんと自分に出来ることを探せばいいって言ってくれました」
きっと誰でも言える言葉なのだろう。でも、だからこそ最初にその言葉をかけた人物は心に強く焼き付けられる。刷り込みとでも言えばいいのだろうか?ローリエもなんとなく意味がわかったのか頷いて言った。
「おとうさまはだれよりもやさしくて、だれよりもつよいです!」
「ええ。ローリエ嬢、今度私も姉と一緒に遊びに行ってもいいですか?」
「はい!」
眩しい笑顔。二人の心には同じ人物が強く焼き付けられているからだろうか。不思議と仲良くなれると二人は確信したのだった。
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