第35話 盗賊団の撃滅
「ば、馬鹿な……全滅だと?」
「は。どうやら行かせた連中は皆、公爵の手の者に捕らえられたそうです」
近くまでくるとそんな会話が聞こえてきたので足を止める。場所は俺たちを襲った盗賊団のアジトの最深部の近く。道中の賊は俺が1人で鎮圧して事後処理のためだけに人手を連れてきたのだが……こんなに弱い奴等にやられるほどのザルな警備だった前のカリスさんが恥ずかしくなってくるよ。
正直、こいつらが何をしてても俺たちに危害がなければスルーするつもりだったが……恨むなら乙女ゲームのストーリーを恨めよと思いながら声をかけた。
「初めまして盗賊の皆さん」
その声に反応して室内の賊が全員俺に刃を向けてくる中でリーダーらしき男は訝しげに聞いてきた。
「何者だ?というかどうやって入り込んだ?」
「普通に入口から。お仲間はとっくにやられてここに残ってるのが最後ですね」
「そ、そんな馬鹿な!何人いると思ってるんだ!?」
「ざっと150人は倒しましたかね。本当は皆殺しにしたいくらいですが汚れた手で妻と娘に触れたくないのでね」
別に人を殺すことに躊躇いはないが……サーシャとローリエに触れる時に汚い雑菌が混ざるのはよろしくないしね。そんな風に話していると突然近くの賊が俺に斬りかかってきたので避けてから峰打ちで気絶させる。
「この!」
「やろう!」
それを見てから2人が襲いかかってくるが、カリスさんの敵ではないので同じ要領で片付ける。我ながらこれで現役時代より衰えているというのだから馬鹿げているが……まあ、それでも守る力があるのは助かる。
「な、なんだお前は!何故俺たちを襲う!?」
「はぁ?」
何故だと?そんなの決まってるだろうが。お前らが俺の可愛いサーシャを狙ったこと以外に説明はいらないだろうと殺気を出しつつもそれを口には出さない。
こいつらにサーシャの名前を出すのなんて絶対に嫌だ。サーシャを汚されたくないし、打ち漏らした場合に逆恨みされても困るからね。まあ、外には俺の屋敷の人間を連れてきてるから打ち漏らしはないだろうけどね。
「さて、残りは9人。手っ取り早く終わらせたいんだけど……降伏してくれるかな?まあ、しても結果は変わらないけど少なくともここで痛い思いはしないで済むと思うよ?」
その言葉に苛立ったのか3人が襲ってきたので俺は全員片腕を落としてから気絶させることにした。護送が面倒だし手足を斬ろうかとも思ったけど……流石にダルマ状態にするのはアホらしいのでやめとく。
「なんだ……なんだお前は!?」
「ただの可愛い妻子持ちのおっさんだよ」
最後にリーダーを気絶させてから、全員を運び出す。一仕事終わってほっとしていると、何故か呼んでない執事長のジークが来ていたので思わず聞いていた。
「来てたのかジーク」
「カリス様、あまりご無理はしないでください……とも言えませんねこれでは」
室内の惨状を見てそんなことを言うので俺はため息混じりに言った。
「全く……妻と娘との時間を削ってまで慣れないことはするものではないな」
「私としては騎士団の頃のカリス様に戻られたのではないかと心配しましたよ。お顔も強ばってますし」
「マジか」
言われてから触って確かに偉く険しい顔をしていたようだと気付く。これでサーシャとローリエに会う訳にはいかないし帰りの馬車でなんとか表情筋を戻そうと思っているとジークは言った。
「お嬢様も奥様も心配なさってましたよ。後できちんと謝っておいてくださいね」
「そうするさ。流石に2人に心配をかけすぎた」
結構派手に動いたので話が伝わってるか、そうでなくても何かを感じてそうなので後できちんとフォローしようと決意する。
まあ、これでとりあえず盗賊狩りは終わりだし、サーシャの死亡フラグはほとんど消えただろう。残りはローリエのフラグをへし折っていかないとと、気合いを入れるのだった。
それはそうと……流石に汗臭いし身体を洗ってから2人と触れ合おうとも思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます