第4話 親子の時間
「うぅん……おとうさま?おかあさま?」
しばらくサーシャと二人でローリエを見守っていると、うっすらと目を開けたローリエがそう呟いた。
そんなローリエに俺はなるべく笑顔で言った。
「おはようローリエ。身体は大丈夫かい?」
「うん……」
ぽーとしているローリエ。まだ本調子ではないのだろうローリエに俺は優しく言った。
「そうか良かった……とりあえず今日はこのまま休みなさい」
「でも、おべんきょうは……?」
「明日からでいい。それとローリエ……今度ああいうことがあったら絶対に隠さないでくれ」
「でも……おとうさまとおかあさまは、おいそがしいからめいわくかけるなって、せんせいが……」
……やはりあのババアは本気で首を斬ればよかったと思ったが、俺はなんとか我慢してローリエの目を見て言った。
「いいから。お前は私達の大切な娘なんだ……迷惑なんてことは絶対にない。だから――これからはもっと頼ってくれていい。甘えてくれていい」
「わたし……いらないって……」
「私達にはローリエが必要だよ。家族なんだから。だろ?サーシャ?」
先ほどから黙っているサーシャに視線を向けると――彼女は我慢できないようにローリエを抱き締めて言った。
「ごめんなさいローリエ……あなたのこと気づくの遅れて……今さらかもしれないけど……私もね、あなたが必要なの……」
「おかあさま……ほんとうに?」
「ええ。だって大切な娘ですもの……」
その言葉に……ローリエも我慢できなくなったのかポロポロと涙を流してサーシャに必死に抱きついた。
「うぅ……ぐす……おかあさま……」
「ごめんなさいローリエ……本当に……ごめんなさい……」
似たもの親子というのだろうか――容姿だけではなく、性格も不器用で本当は優しいところがそっくりな二人の様子を見て俺も二人を腕の中に包みこんで二人が泣き止むまで優しく二人の頭を撫でた。
今回のことではっきりした――この二人は自分でなんでも背負い込むことがある。痛みを我慢して平然と笑顔を浮かべて徐々に追い込まれていくタイプの危うさ――誰かが側にいて支えてあげないといけないそんなところがある。
サーシャは俺がこれから一生夫として支えることは出来るだろうが――ローリエはいつかは嫁に行くだろう。その時に側で支えてくれる優しい心の支えが必要かもしれないな……幸い我が家は公爵家だし、ローリエはまだ4才――婚約をするにしてもまだ猶予はある。
本当はこんな可愛い娘を嫁に出すのは――もちろん、1人の男親として悔しいという気持ちはあるが、いつまでも手元に娘を置いて不幸にするのは嫌だった。心からローリエを愛してくれて、ローリエも心から愛せる相手を探さないとな……。
「さて……二人とも、明日からご飯はなるべく時間をあわせるってことでいいかな?」
二人が泣き止んでから俺は思いきってそういう提案をしてみた。もちろん二人はノーとは言わずに快く返事をしてくれたが……そこでふと、ローリエを見るとローリエは何かを言いたそうにしているのが見えたので俺はローリエに聞いてみた。
「どうかしたのかローリエ?」
「あのね……おとうさま、おかあさま……きょうはいっしょにねたいんだけど……だめ?」
「いいに決まってるだろ」
即答だった。モジモジとしてそんな可愛いおねだりをする娘に、俺もサーシャもノーとは言わずに頷いた。
まあ、夫婦の時間ももちろん取るが――今は幼いローリエにこれまでの寂しさを忘れさせるくらいに愛情を注ぐことが大切だろう。
あ、でも……少し考えてから俺はサーシャにこっそり顔を近づけると囁くように言った。
「二人で寝るのはまた今度――約束だからね」
そう言うと、サーシャは少し顔を赤くしてからこくりと頷いた。――うん、昼でなおかつ、ローリエがいなければ理性が危ないよね。娘の前で夫婦の営みを見せつけるという趣味の悪いことはできないからね。
そんな風に俺たちはこれまでとは違う関係を、今日、ここから新しく始めた訳だった。
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