すれ違いコミュニケーション

㐂咲七々

0章 春

1 - 女の子に触れたい年頃になった男

春。


一か月前とは違う歩きなれない道を歩いて、少し散り始めた桜が揺れ踊るカーペットになって僕の心を躍らせる。


× × ×


僕、日陰 学ひかげ まなぶ。今日から高校一年生、そして今日は入学式。

高校の男といえば誰しも女の子に触れたい年頃。

しかし僕は、モブ顔で勉強は中の下。中学校生活では友達は最低限。席は目立たない廊下側の一番後ろ。弁当はいつも母さんが毎朝作ってくれる中身全体茶色気味な弁当。恋愛なんてまったくだ。


気持ちばかりの高校デビューと僕は、眼鏡をコンタクトにし髪型も目立たない程度にワックスをつけて整えてみた。


僕、思ったよりも気合入っちゃってる…?


シャツは規則を破らない程度のラフに。


「目立ちたくはないからな…」


高校のブレザーを羽織り、中学の頃は白い運動靴だったけど今日からは履きなれないローファーを履く。

…思ったよりも歩きにくいな。

そんなことを思いながら玄関を出ていつもとは逆方向の道を歩く。


陰キャな中学校生活を送っていた僕には、高校入学初日にラブコメ漫画みたいな出来事が起こるとは思っていなかった。


僕はこの日、お日様からたくさんの春をもらった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る