良いこと。良かったこと。

ヨッシーがいたから、俺はクラスでも楽しく過ごせたなぁ。大学にはクラスっていう概念が無いから、あの頃の特定の仲間達と過ごすのがすごく楽しかった。



中学に入り、2ヶ月が過ぎた。既にクラス内にはグループが出来ている。

派手な女子だけのグループ。

大騒ぎする男子だけのグループ。

教室に一人でいるやつもいるなか、俺は幼なじみのソウよりも、ヨッシーといることが増えた。部活が違うだけで、こんなに変わるんだと思っていた。

しかしそんなことは今の俺にはどうでもよかった。

給食前の4時間目に席替えがあった。

俺の隣にはマツモトさんがいる。胸がどっくんどっくん波打つ。頬が暑い。マツモトさんにバレてないかな。


給食中、話しかけた方がいいかな、なんて考えてると、

「イノウエくんだよね?よろしくね。」

とマツモトさんから話しかけてきた。

透き通るような声。一言一言丁寧な話し方。うわ。可愛い。浮かれたとこは見せれない、格好いいところを見せないと。クールに、クールに言うんだ。

「そうだよ。マツモトさんだよね?よろしく。」

よし、言えた。声も裏返ってない。

「イノウエくんってヨシオカくんと仲いいよね。小学校一緒だった?」

と、マツモトさんが言った。バケツいっぱいの冷水をかけられたみたいに、浮かれた心はしぼんだ。.....ヨッシーのことは知ってるんだ。小さな言葉が引っかかってしまう。

「いや、俺とヨッシーは中学から知り合ったよ。」

「あ、そうなんだ。同じ部活だから、勝手に仲良いんだと思っちゃってた。」

「え?俺がバスケ部って事知ってたの?」

「うん、いつも外を走ってるよね?何してるの?」

「あー初心者だから、中でやらせてもらえないんだ。...ダサいよね、おれ。」

恥ずかしい。逃げだしたい。よりにもよってそんなとこ見られてるなんて。すると、

「そんなことないよ!!イノウエくんいつも一生懸命走ってるじゃん!!かっこいいよ!!」

食い気味に、ハッキリと、俺の目を見てマツモトさんは言ってくれた。

「え、あ、ありがとう...?そうかな?」

「うん!じゃ私この後、友達と約束してるから、もう行くね。」

と、マツモトさんは、食器を片付け、教室を出ていった。

やばい。

めちゃくちゃ嬉しい。

俺の事、見てくれてたんだ。

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