始まり。出会い。恋。
あの頃、小学校を卒業して中学生へとなった俺はキラキラした毎日が始まると思いながら自転車を漕ぎ出したんだった。
田舎の中でも特に小さい小学校だった俺は1つのクラスに40人も同級生がいるのを目の当たりにして、とても驚くと同時にとんでもなくビビっていた。クラスの扉を開けるのを躊躇っていると、ガバッと肩を組んでくる奴がいた。
「リョウ!また同じクラスだな!!」
と、朝から大声で話しかけてきたのは、小学校6年間を共にすごしてきたソウだった。
「ソウ!またお前とかよ!」
と、内心すごく安心しながら二人で教室に入って自分の席に着いた。
俺とソウは苗字が似ている。だからいつも出席番号順の時は近かった。そのおかげでソウとは親友と呼べるほどに仲良くなれた。新しいクラスでもこいつがいるなら大丈夫か、と思っていると、
「アレ!ソウ!お前もこのクラスだったのか」
そう言って声のする方を見ると、全く知らない坊主頭が立っていた。誰だこいつと思っていたら、ソウが、
「ヒデキ!サッカー部で集まる以来じゃん!」
そうだ...。ソウは小学校でサッカークラブに入って、中でも県の選抜メンバーに選ばれるぐらいサッカーが上手いんだった。と、なるとヒデキとかいうこいつはサッカーつながりの友達か、と思っていたら、
「5組にリオとダイキがいるから、会いに行こうぜ。」
と、ヒデキが言った。まずい!この流れは俺が1人になってしまう!話しかけねば!
「まじか!行こうぜ!!」
と、2人して足早に去ってしまった...。まぁいい、どうせあと少しで朝礼だ。
ガラガラ
「おはようございまーす。はい、皆さん席に着いてくださーい。」
と、やたらと通る声で眼鏡に短髪という、いかにも真面目という格好の先生が入ってきた。ハヤトもいつの間にか戻ってきて、着席した。よかった、いきなりの一人ぼっちは、まぬがれた。
「それでは今から入学式の段取りを説明しますねー。よく聞いておいてください。」
先生が言う。
ちらりとベランダ側の窓を見ると、桜の花びらが風邪で舞い上がってきた。
中学校生活が、始まる。
入学式を終えて、教室に戻り自席に座っていると、
「えー皆さん。まずは入学おめでとうございます!これから1年間皆さんの担任となる宮井です。」
と、先生が言った。そして続けて、
「さっそくですが、自己紹介をしましょう。じゃあ安達さんから、自分の名前と何か一言お願いします。」
そして、アダチさんから自己紹介が始まった。
俺の番はすぐに来た。
「井上 りょうです。1年間よろしくお願いします。」
そして俺に続けて後ろから
「江角 颯です。よろしくお願いします。」
と、ソウが言った。
ふう、あとは聞くだけだ、と思いぼーっとしながら聞いていると、
「松本 かのです。バレー部に入ろうと思っています。よろしくお願いします。」
可愛い。すごく。
短く肩までの長さで切りそろえられた髪、声座るまでの仕草、全部が可愛かった。
俺は、
一瞬で、
彼女に恋をした。
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