第8話

金沢は、羽黒と芽内のやり取りを見ていて気が気でなかった。

羽黒の逆ギレ具合からして、芽内はただじゃ済まされない。早いうちに虐めのターゲットになるだろう。

だが、と考える。


芽内の意図が読めない。金沢を彼氏と言ってみたり、羽黒を振ったなどと言ってみたり(あのキレ具合からすると、真実を言っているのは羽黒だろう)

彼女の発言は嘘ばかりだ。


ニコニコしながら、息を吐くように嘘をつく。そこに、彼女の感情が何も感じられないのが不思議だ。

そう、何かマニュアルが有るかのように黙々とこなしているように見える。


ともかく、さっきの出来事でクラスにおける羽黒のポジションは微妙に変わった。

クラスの王様から、美人なクラスメートにちょっかいをかけ、あしらわれた残念な人、という印象に塗り変わっただろう。

もちろん、羽黒のクラスにおける影響力は依然として変わらないだろうが、少なくとも羽黒に対するクラスメートたちの印象が多少なりとも変化したことは否めないだろう。


そこまで考えて、芽内がそんな事をわざわざする理由がわからず、金沢はますます頭を抱えた。

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