第6話

学校が近づくにつれ、当たり前だが学生が増えてきた。

もうだめだ、誰かに見つかる。

そう絶望的な気分で歩いていると、案の定、芽内と歩いている金沢を見つけ、指をさしてはこそこそと話をされる。

隣を歩く彼女は、物ともせず淡々と歩いている。


靴箱に来た時点で、もう限界だった。

何も言わず急いで靴を履き替えると、早歩きで芽内を置いて教室に向かった。

金沢が入った瞬間、それまで会話をしていたクラスメートが一斉にしん、と黙る。

静寂は一瞬だったが、その一瞬で昨日までとはまた違う学生生活が始まったことを察するに十分だった。

俺が一体、何をしたっていうんだと恨み言を考えていたら、芽内が入ってきた。

やはり、しんと静寂が訪れる。

芽内はそんな空気を気にした様子もなく、すとんと椅子に座り荷物を片付けていく。

昨日とは打って変わって、芽内を囲む人はいない。クラスメートが芽内にどう接したらいいのか、計りかねているようだ。


その雰囲気をぶち破ったのは、羽黒だった。


「よお、金沢の彼女さん」


攻撃的に芽内にそう言うと、ニヤニヤと笑いながら黙って様子を見ていたクラスメートたちに聞こえるように

「知ってるか、こいつ金沢と付き合っているんだとよ。キモいよな」

と言い放った。


クラスメートたちは羽黒に対して、愛想笑いのような媚びた笑顔をへらへらと顔に貼り付けている。


あぁ、虐めのターゲットが自分だけでなく芽内にも広がったのか、と暗澹とした気分でいると、キモいと言われた芽内は羽黒に対してまた、あの魅惑的な笑顔を向けていた。

そして口を開くなり

「羽黒くん、私に振られたからって急に意地悪になっちゃうの?」


そう言うと、唖然とする羽黒を見てますます笑顔を深めたのだった。

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