十三章 虎千代(3)
「虎ちゃん、さっきはありがとうね」
ひとしきり泣いて、すこしだけ気持ちが晴れた若様は、虎千代の短い前足をそっと握りました。虎千代は若様を励ますように、その手をぺろぺろとなめました。
「さっきはどうして虎千代が咆えたら、鬼将軍の金縛りが解けたんだろう?」
「おん」
虎千代は丸い瞳で若様を見上げました。
「虎千代が犬護法だからかなあ」
「おん、おん」
虎千代は若様の胸に前足をかけると、涙に濡れた頬をなめて尻尾を振りました。
「ああ、虎千代と話ができたらなあ」
若様がため息をつくと、虎千代がやおら若様のお尻の下にもぐりこみました。
「なに? どうしたの?」
「おん!」
虎千代が帯から下がった
「いてて。なんだい。この印籠が欲しいのかい?」
印籠のふたを開けると、まず小さな
「これは母上のだよ」
袋に染みついた
「オン!」
虎千代がパタパタと尻尾を振りました。
「聞き耳ドングリだ。そういえばお晴が入れてくれたって言ってたっけ」
若様が目を輝かせました。
「これで虎千代とも話せるかもしれないぞ」
若様が聞き耳ドングリを耳に入れた途端、頭の上から威勢のいい声がふってきました。
「よう! 若様。今日も朝から隠れん坊ですかい?」
シラカシの小枝の間から、リスのつぶらな瞳が笑いかけました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます